第11話 雨天の奇襲(後編)
俺は死期が近いと悟った。その時だった。
人型の石像がリンめがけて投げられた。
築いたら俺は岩の串から抜け出し背負われていた。
「派手にやったね。まあこっちも人のこと言えないけど」
その言葉通りソフィーも随分ボロボロだった。
「降ろしてくれ。大体は上半身の傷が多い。
足は無事だから走ることはできる。
それよりさっき投げたのは何だったんだ」
「標的を石化したもの。
最初の攻撃で議会にいた2体のエルフは仕留めた。
他は外に逃げちゃった。
その後のこちらの攻撃はすべてよけられたし、ボア・スネークを囮にして引き上げた。
あそこにいる厄介な魔法使いも倒せなさそうじゃない?」
「君の目を使えば倒せたんじゃないか?」
「位置や角度が悪かった。
あのままじゃ君含めて石化するだろう。
すぐに殺されそうで一刻も時間がなかったからね。
今まで私に情報提供してくれたのは主に君だからね。
利用価値があると思っている。
できれば君には死んでほしくない。
まあそうは言っても入ってもメデューサってばれてるからね。
目の対策はすでに考えられているんじゃない」
「やってみてわかった。こんな手負いだけじゃ無理だ。逃げる方が先決だろう」
逃げているが度々ストーン・バレットの攻撃が俺たちを貫く。
俺はオオカミ特有の足を使って逃げているが、彼女は手下の魔物ボア・スネークを盾にして体を守っている。
「この動きは二人とも逃げている感じだね。かなりまずいかもしれないよ」
「二人に持たせた血の小瓶でそんなことも分かるんですか?」
「ああ、だいたいの位置の動きからなんとなくね」
「助けませんか?」
「そうするの?シャミ―ニアは優しいね。
今なら彼らの位置が分かるからこちらが弓をエルフから借りて彼らを殺すこともできる」
「何を、言っているのですか?」
「私たちがバンとソフィ―を殺せば、エルフたちから英雄扱いされる。
勇者一行のジョセーヌと人の国側の中枢に侵入できるかもしれない。
そうは思わない?」
「本気で言っているのですか」
サミエラの方を見たが、表情からは本気か冗談かはわからない。
「魔族ならこれくらいするよー。
誰もかしこも自分のことしか考えないからねー」
「魔王軍にはいたずらに少数の魔族を消耗させる余裕はありません。
生かした方が得だと思います」
「分かった分かった。今回は君に従おう。じゃあどうするのかな」
返事をする前に私は全身を覆った長袖長ズボンを脱ぎ、予め着ていた軽装な衣装だけの姿になった。
「変身するならちゃんと足がつかないようにしてね。この任務自体が失敗に終わる」
「ちょっと誘導するだけ、すぐ戻る」
すぐに元の魔族の姿に変身した。
翼を使って外へと飛んだ。
近くにある学び舎集落がある。そこまで飛び、自分の喉の内部分をドラゴンに変えた。
学び舎集落の建物の上部に火の息吹を放った。
「きゃー、燃えている。みんな避難して!」
中にいたエルフの子供たちが一斉に外に出てはしごを伝い地面に降りてくる。
ただ一人ランだけこちら側を見つめて。
雨風にめけないトルネードを引き起こしたり、大きなストーンボールを作り出し放ってきた。
威力は十分だが精度も悪いし全然避けられるレベルだった。
そのまま遠くへ逃げ去ろうとした。
「ふざけるな、悪魔め、なぜこんなことをする」
別にエルフに対してうらみがあるわけじゃなかった。
私が恨んでいるのは人と勇者たちだけ。
だからここにいる者の中ではジョセーヌだけ。
けれどあの日私も訳の分からない暴力にあった。
私のやったことと言えば彼らの住処の屋根に少し火を放っただけ。
別になかにいる子供たちも逃げられるし、長老たちは殺されているかもしれないけどだからどうした。
人間たちを倒すためなら別にお前らなんかどうだっていい。
ウルフ・ソルジャーとメデューサを追いかけている。
見たところどちらももうかなりの手負いだ。このままいけば倒せる。
「ジョセーヌ、学び舎の方で火が上がっているわ」
「あの二人の魔族を倒さないと」
「そんなこと言ってる場合?あなたの妹のランもいるのよ。
私たちは子供たちにも安全に暮らせるような平和のために戦っているんでしょ。
引き返すわよ」
悔しいがリンの言うとおりだった。このまま帰った方がいいだろう。
学び舎に戻ったら子供たちは外に出ていた。
誰も死んではいない。
「雨の中なのにまだ燃えている。水魔法急いで消化しないと」
「まるで龍の火の息吹と同じくらい炎が維持されていますね」
「お姉ちゃん、さっき空を飛ぶ魔族が来て学び舎が燃やされたの」
「そんなことが、どういう奴だったんだい」
「あのね、暗くてあまりわからなかったけど、ドラゴンの翼が生えていて体はほとんど人間だけど角が生えていた気がする」
言われて思い返した。
魔族のミラに似ている。
様々な魔物を操れて固体の戦闘力が高かった魔族。
だけど彼女は…いやしかし似た子供のようなものがいたはずだ。
仕留めそこなったが。
「教えてくれてありがとう。
私はこれから魔族に対抗するためにも人間側との協定を実現して見せる。
あなたたちが幸せに暮らせるように」
次の更新予定
2024年12月18日 19:00
半人半魔族の謀略 陸花 @rikubana
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