第4話 A young man who doesn't look back

 サシバは暗くなり始めた街を歩きながら、広がっていく顔のヒビを撫でながら「これからどうするか」と考える。


 すると、ふと、裏路地の方からガシャン、という音が聴こえた。


 まるで甲冑のような音だった。


 ぎらり、という小さな鈍色の光を、サシバは見逃さなかった。


 その光と音が気になり、サシバは裏路地に向かって歩き始めた。


 そして、込み入った所までやってくると、そこには馬があった。灰色の小汚い馬だった。


 その小汚い馬には首のない騎手が跨っていた。


「なんだ、そりゃ……」


 頭無し騎手スリーピー・ホロウという、死霊をご存知か。


 その名の通り、頭のない騎手で、かつての戦争で砲弾により頭を吹き飛ばされてしまった騎手の霊だと言われているが、この騎手は夜な夜な墓場から抜け出して、自分の吹き飛んだ頭を探すのだと言う。


 いわゆる「魔物」と呼ばれる者である。


 我が頭蓋のひと欠片でさえひとつたりとも見つけられない、その憐れな騎手に、サシバは同情した。


「此処はひと度も戦場になったことは無いよ。探すなら、探せるところを案内するよ。ついてくるかい。近いんだ」


 騎手は何も言わなかったが、馬がかわりに頭を下げた。


 それを肯定と見て、サシバは「ウィンガール戦争慰霊公園」というところまで案内した。


 此処は初めて強力な砲台が使用された戦場だった。


「此処なら見つけられるかもしれない。俺も一緒に探そうか?」


 馬は、拒否するように鳴いた。


「そうか。じゃあ、俺は行くよ」


 立ち去ろうとすると、背後から「ありがとう」という声がした。


 これに対し、サシバは「なにがだよ」と小さく笑った。

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