エンディング 核爆発だ
死んだら俺の部屋にいた。
それに気づく前に、俺の口は流れるままに勝手に動いていた。
「はぁー宝くじ当たらないかな」
手元のスマホには占いサイトが表示されていた。殺される夢を見るのは人生が変わる吉兆であると書かれている。
そして声が聞こえてくる。
〈あなたはダンジョンマスターに選ばれました。おめでとうございます。今日からダンジョンマスターです〉
どうやら俺はやりなおしのダンジョンマスターとして、やりなおしが起きたらしい。
確か条件はファンタジーの発生によって人類文明が滅んだ場合にやりなおしが起きるんだとチュートリアルAIが雑にインストールした知識にある。
なぜ人類文明が滅んだのかわからずじまいだな。
今度はすぐに部屋の押し入れの中にダンジョンを作った。これで姿を隠し、日常を追うことにしたのだ。
「俺にどうしろと」
俺は思わずそう呟いた。
自衛隊が来て、外交官と交渉?
そんなこと今の俺に出来そうになかった。
自衛隊の命を賭したダンジョン攻略に俺は敬意と恐怖を覚えた。
そして部屋をノックされる。
「大丈夫かい? 起きてるのかい? ニュース速報見たかしら。ネットはどうなってるか知ってたら教えてくれると嬉しいんだけど!」
ああ、これがやりなおしということか。
前回と同じだった。
前は適当に返事をしてスマホで検索して、雑チュートリアルに意識を失わせられたのだった。
「わかった。すぐ手伝うよ」
俺は部屋を出て、親を手伝った。
「え、あ、私が洗濯物手伝って欲しいってよくわかったわね」
まだ言ってなかったっけ。
それから1ヶ月が経った。
数ヶ月後には通称冒険者ギルド制度が発足する予定だ。
ダンジョンマスターもちらほらとネットに現れたり配信者になっていたりもする。
初動暴れたダンジョンマスターのほとんどは日本では自衛隊や冒険者に討伐されていた。
海外だとかなり鬼畜なダンジョンマスターのせいで大変だと言う。
俺は……その間ひたすら隠れていた。
何も変わらない自宅で引きこもり状態。
部屋の押し入れのダンジョンもDP自体は微々たるものだがスライムジェネレーターのおかげで入ってくるしな。
リビングで家族とテレビを見ていたら冒険者ギルド発足のニュースが行われる。
これから数ヶ月後には一般人はダンジョンに潜り、魔物を倒しステータスを強化し、資源を持ち帰る。
現代ファンタジー物、お決まりの世界が始まるのだ。
「冒険者、楽しみだな」
俺は冒険者になると両親には告げた。
「私は心配よ。ダンジョンでは死ぬかもしれないのよ……痛い思いだってするでしょう」
「働かないで死んでるようなものだったからさ。俺はダンジョンになら行ける気がするからさ。やってみたいんだ。もし死んだら結構な保険も降りるみたいだし、最後に親孝行できるでしょ」
「バカ言わないで!」
母が叫ぶ。
「やめろ、せっかくやる気になってるんだ。やらせてみろ! お前も死ぬだなんていうな! 必ず生きて帰って来い」
父が母と俺に怒る。
「私が悪いんでしょ。全部」
ヒステリックに母が言う。
「俺が悪かったよ。冒険者登録前に体を鍛えるし、無理はしないよ。それに、まずは痩せないと」
なんて両親とは喧嘩しながらも応援してもらった。
数ヶ月後の冒険者ギルドに登録して他のダンジョンマスターとの秘密裏な接触を俺は目論んでいる。
流石に1ヶ月潜伏し様子を見ていたわけだが、そろそろ動かないと、と思ったのだ。
このまま文明崩壊を目にするまでのんびり過ごすのもありだが、いつ崩壊するのかはわからないわけで、ある程度情報というものを集めたいと。
人類文明の崩壊の理由を探らないといけないんだろうから。
本音としては無限の残機があるうちに気楽に楽しく生きたいなと思ってるんだけども、流石に遊びまくってたらこの力が没収されるなんてこともありうるかもしれないので。
使命を果たす気はあるんです、この力を授けてくださった大いなる者よ。感謝を捧げます。
あぁ、でもせっかくの現代ファンタジーなのだから好きに楽しく生きたいな。
なんて内心思いながら両親と話をしていたら。
ブォン、カチッ
突然停電が発生した。
あかりを求めて手元のスマホに触れる。
「スマホも使えない?」
俺は思わず呟いた。
これじゃただの石板だ。
そしてそのすぐ後に、窓の外で遠くが急に明るくなった。
停電で暗かった部屋も明るくなる。
「なにあれ……」
母がそう言った。
マンションの一室の窓から遠くに見えたのは凄まじい光だった。核爆発だ。
「窓から離れて! 伏せて!!」
俺はすぐにそう叫んだ。
少し遅れて窓が割れた。
母の悲鳴が聞こえる。
「怪我はない!?」
「だ、大丈夫よ!」
核爆弾の衝撃波が到達し、うちの家の窓を割ったのだろう。
いまは助かったが、光が見えた時点で被曝したはずだ。
ダンジョンマスターである俺は問題ないだろうが、家族はもう助からないのだろうか。詳しい知識なんてない。検索しようにも、もうネットもスマホも使えない。
単なる停電ではなくスマホ、電子部品の使われたものは全部使えなくなった。停電し、部屋は真っ暗だ。高高度核爆発による電磁パルス攻撃もあったのだろうか?
核の光、この日、人類文明は核報復の連鎖によって滅びたのだろう。ダンジョンマスターと冒険者の出現による混乱によって人類文明が滅びた為に俺は気づけば、またあの時の室内に戻されていた。
俺の口は流れるままに勝手に動いていた。
「はぁー宝くじ当たらないかな」
手元のスマホには占いサイトが表示されていた。殺される夢を見るのは人生が変わる吉兆であると書かれている。
そして声が聞こえてくる。
〈あなたはダンジョンマスターに選ばれました。おめでとうございます。今日からダンジョンマスターです〉
どうやら俺のやりなおしのダンジョンマスターとしての使命は核戦争回避というのをまずやらなければならないことのようだった。
「遠く離れた海外に対してどうしろと……自分のことばかりで精一杯だというのに。ファンタジーしたいゲームしたいネット小説読みたい」
思わず俺は呟いた。
そして部屋をノックされる。
「大丈夫かい? 起きてるのかい? ニュース速報見たかしら。ネットはどうなってるか知ってたら教えてくれると嬉しいんだけど!」
ああ、そうだ。これがやりなおしということだ。
「ファンタジーが始まったみたいだよ!今から起きて洗濯物手伝いにそっちに行くよ。あと、えっと、あと俺、今日からダンジョンマスターになってしまったみたい! あと1ヶ月後に核戦争が起きて滅びるみたい! 力を貸してください」
「え、な、ななな、なにいってるの!?」
今回は隠れていただけの前回よりはきっと上手くいく。
たとえ上手くいかなくても何度だって挑戦していけばいいだから。人類文明がこの先、生き残るまで。
今日からダンジョンマスター @7576
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます