人類からの攻撃か
呼びかけがあった。
保護の用意があるという呼びかけだった。
だが、俺は何も答えることはできなかった。
「人類からの攻撃か。誰かに相談したい……AIにでも聞くか。スマホのアプリを開いてっと、ダンジョンマスターになってしまいました、日本政府の外交官に保護の用意があると聞かれた場合どうしたらいいですか?っと」
まともな返事は期待せずに尋ねてみる。
『その場合、外交官と以下の4点について話し合いましょう。保護の条件、ダンジョンマスターや侵入者への安全性の確保、情報公開、協力姿勢を示す、などのことです。こういったことに留意し、共存の道を探りましょう』
と返答があった。さらには
『なぜ外交官が保護を呼びかけてきたのか、理由を確認し、透明性と安全性を確保してください』
とまでアドバイスをもらった。
「雑知識インストールのチュートリアルAIより現代のAIの方が優秀じゃねーか。どうなってるんだ。現代科学ってすげー」
思わず俺は乱暴な口調になって、そう呟いた。
続けて相談する。
「返答しない選択肢はどうですか、っと」
『もちろんその選択肢も考えられますが、その決定は慎重に行うべきでしょう。リスクや将来を考慮した上で、自分の決定に自信を持つことが大事です』
そんな答えがかえってきた……。
「俺はやりなおしのダンジョンマスターだ。
俺が死んでも人類文明が滅ぶ場合は復活するらしい……魔法が芽生えたことで人類文明が滅ぶ場合は必ず復活するならば多分今速攻で死んだらやりなおせるよな。でなければそもそも俺という存在理由がない。リスクはないようなものだから返答せず戦ってみるか……」
俺にダンジョンマスターとやりなおしという力を与えた存在がいる以上、このままだと、きっといつかの時点で人類文明は魔物によって滅びるのだろうから。
そうだよな? じゃなきゃこんな力与えないよな?
そうして自衛隊との戦闘が始まった。
機関銃を装備した装甲車でダンジョンに乗り付けてきた。
道路1.5車線ぐらいが通路の最低の広さだから車、入って来れてしまうのだ。
装甲車に2名とその周りに10名の自衛隊員が歩き、警戒しながら長い長いダンジョンを進み始める。
装甲車の上には機関銃が装備されていて人が車体から生えて機関銃を握っていた。表情は当然険しいものだ。スマホで検索したところによるとWAPCと呼ばれる装甲車らしい。
「蚊で刺し放題だな」
普通のモスキートスライムやスケルトンはダンジョンの奥へと撤退させて、少数のスライムカースモスキートで侵入者全員に呪いをかけることができた。
それからしばらく様子を見る。
彼らは記号を用いた簡単な算数問題に答え、記号の意味を理解していく部屋や、その記号で平和のメッセージを表すような問題を出した部屋を簡単に進んでいく。
わかりやすく説明すれば、たとえば⚪︎+⚪︎=〇〇のように書かれた記号を表す事で、1と2や+、=という記号の意味が伝わるような簡単なものだ。平和のメッセージは棒人間が殺されるイラストを否定したりとか、棒人間が増えること表す図を肯定したりとかダンジョンの奥に入るのを否定したりするイラストとかだ。
ダンジョン内にはそんな問題やイラストを表示する小部屋を用意していた。
イラスト自体は古代壁画のようなイメージで俺の下手な絵でもうまいこと誤魔化せていると思いたい。
これで平和のメッセージが届くといいななんて思ってるんだけどな。
「そろそろ呪いが効いてきたか」
徐々に重度の風邪のような症状を訴えるものが増えていく。咳、くしゃみ、だけでなく倦怠感や頭痛、高熱などが出ていることだろう。
流石に異常に気づいたのか、全員を装甲車に乗せて自衛隊の者は一旦ダンジョンから出ていった。
撃退ボーナスとか、滞在時間によるものとか、そういうのでDPを獲得することはなかった。殺さなければDPは手に入らないのだろうか。
再度、共存の呼びかけがあった。
しかし俺はそれに答えられなかった。
そして2度目の攻撃が始まった。
今回は防護服を着用し蚊取り線香を大量に炊いて入ってきた。
蚊によるものだと当たりをつけたのだろう。
流石に誰にも気付かれていないってことはなかったか。
ダンジョン内部で青い蚊がとんでいてその後に体調を崩したらなんらかの原因だとは考えるだろう。
スライムに蚊取り線香は効かない。防護服は厄介だったが、今度はカースだけではなくノーマルのスライム蚊も大量に投入し、その針で防護服に穴を開けて、そのまま中身の人体を攻撃した。
すぐに撤退していった。
そして3度目の攻撃があった。
今度は装甲車に蚊の侵入対策を施し、内部には防護服を着た人間が乗り込み、アクセル全開で突っ込んできた。
犠牲も問わず、自衛隊員は戦った。
質問部屋の時間稼ぎも足らず、最終的には降車して手榴弾や爆発物、火炎放射器などで蚊を落としながら進む自衛隊。
結局そんな自衛隊には歯が立たずにダンジョンコアに到達され、破壊された。
スケルトンは轢き殺されたり爆殺されたり銃弾の雨で倒されたりろくな活躍をしなかった。
そしてコアを破壊された俺は死んだ。
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