ダンジョン作成、立地と中身

夕飯の後、魔物作りに熱中していたが、気づけば翌朝になっていた。

ダンジョンマスターは睡眠も食事もいらない、ただコアからの魔力が必要だ。


俺のダンジョンはまだ作られていないため、体は刻一刻と死に向かっている。

だるくなっている程度ではあるけれど頭にインストールされた知識によると今日中にはダンジョンを開通しなければならないだろう。


入り口の見た目はDPと相談ながらも自由に決められる。


場所は決めた。

数年前、散歩をするようにしてた頃の散歩コース。近くの河川敷だ。

ちょうど支流との合流地点でYの字になっているところ。

そこの土手には遊歩道があって入り口を塔型で橋をかけてあげれば土手の両方からアクセスを確保できる場所、少し歩けば駅もあるし小学校が近くにあるそんな場所に決めた。

見た目のセンスなんて皆無だし、DPもないから、殺風景な石の塔に見た目だけの石の橋をかける予定だ。


ダンジョンコアが開通していれば知識をインストールされても気絶することはなかったようだが……本当にチュートリアルAIはあれだったな。はたしてこんな状況を作り出したのは何者なのか。


「さて、けれども、ただただ迷路とか作っても意味ないよな」


人類の強さは何か、その持久力である。


なんてどこかで聞いた言葉が思い出される。

一日中走っていられる生物なんて人類ぐらいだという話だったな。

つまり相手が疲れ切って弱くなるまで追いかけ続けるか巣穴で耐え忍び、殺す。それが人類だという話。


いくら迷路を作って人を殺し続けても、全て記録されて、正解の道がわかった瞬間、他の全ての迷うような道は無視されることになるだろう。


「ひたすら長い道をできるだけ用意して、看板などで友好的な接触方法を用意する、かな……」


あれこれ考えても、もらったDPが他のダンジョンマスターに比べて10分の1という……1万ポイントではあまりにもできることが少ないためそのぐらいしかできない。1階層作るだけでカツカツだ。通路や部屋や罠や魔物を置かなければならないだろうし、そもそも他の階層を作るのには千ポイント、階層を森とか海とか無重力とか不思議空間としてなんらかの効果を加えるのに平気で安くても1万ぐらいかかる……。

ちなみに煉瓦造りの壁や床、ただの洞窟風のものなどは無料の初期アセットとなっている。階層というのはまたそれぞれが別の空間となっている。


「ゲームだったら神ゲーだよな。リアルな模型作りというか、ダンジョン作成なんだから」


ダンジョンマスター、要するに異空間の神として空間をDPで広げていく。

大きさは四角形の空間のようで、辺を伸ばすに従ってDP消費は増えていくようだ。


その四角形の空間の中に床や壁をつくり通路や部屋としてダンジョンを作っていくのだ。

壁の向こうがわは何もない空間というやつだな。破壊不可の壁を貫通できたら宙に浮く壁が見えることだろう。どこぞのバグゲーみたいに落ち続ける空間に入ることになる……。


ちなみにそういう壁抜けや床抜けが起きるように設計するとエラーでこの世界に繋げられないようできていた。残念だな。もちろんダンジョンコアへの道ができていないと繋げることはできなかった。


「そうだ、イメージは人間の腸のようにだ。空間に格納されたグネグネとした一本道を作ろう。途中平和的な交渉を望む風の謎解き部屋も設置しよう。時間稼ぎだ」


おおよそのイメージができて、作り始めた。

道は設計できる最大限凸凹にし、歩きづらくした。

照明は自動で等間隔に不思議な松明モドキが設置されていて薄暗い程度だったのだがDPを消費して一部松明を消し、暗闇の場所を作った。

あとは蚊が飛んでても違和感がないように道の各地に水溜りをつくる。

この水溜まりは実はスライムだ。


ステータスは以下の通り

名前・スライムジェネレーター

種族・スライムジェネレーター

スキル〈DP生成〉

消費DP5


「暗闇は普通にライトがあるだろうからあんまり意味ないけど、水溜まりは雰囲気も出ていい感じに感じる感じだな」


1日1回に1程度のDPを生み出す雑魚魔物だ。

ダンジョンに入ってきた地球の空気中の魔力を吸収してダンジョンに渡すだけの魔物だ。戦闘力皆無、ただの水溜りで踏まれても死にはしないしなんの反応もしない。

水溜まりの中の凹凸に隠れた魔石を見つけられて取り出されて壊されると当然死ぬけどもね。


さてさて、こんな感じでダンジョンは完成だ。この体が持つ時間ギリギリで開通させるとしますかね。


昨日と同じように親の作った料理を食べたり洗濯を手伝ったりして俺は夜中を待った。




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