ダンジョン作成、魔物づくり

「作れる魔物はこれだけか」


まずは作る魔物を決めてからと思い自身の能力を確認する。

生み出せる魔物一覧、いわゆる魔物辞典のようなものが脳内にインストールされていた。


俺の場合ダンジョンマスターとして生み出せる魔物が極端に少なかった。スライムやゴブリン、スケルトンといったファンタジーの雑魚の代名詞や大した影響力のない霊体などのいわゆる弱い魔物やいくつかの地球生物の魔物化ぐらいができることだった。

他のダンジョンマスターはいくつかの種族に特化した能力があるらしい。


魔石を核とする魔法生物、それが魔物。

霊体なんかは自身の魔石を違う位相に隠しているとか、位相とはなにかはわからなかった。


DPを消費して魔物を生み出すわけだが生殖機能などがあれば魔物は自然と増えていくようにすることもできる。スポナーなんていうのもあるな。ただ維持に必要な食料や魔力も考えなければならない。それらが手に入れられない間はDPで用意するか餓死してもらうことになる。


現在の地球には魔力なるエネルギーが満ちているそうな。

入り口から魔力を吸収してダンジョンは成り立つそうな。

ファンタジーではあるが、謎ばかりだ。

こんな状況を作り出した存在も謎。

人類同士を争わせたいのだろうか、しかし俺という人類文明を守る役割を与えるというのも謎。


そもそも俺にそんなことが出来るとは思えない。


「まぁ気楽にやってみることにするしかない。こんな力を与えてくれた存在に感謝はあれど文句はないよな。おっと、便利な機能があるじゃないか」


地球生物を好みに魔物化したりモンスターをデザインできるモンスターデザイン機能というものが脳内にあった。

多分ニュースで情報のあったゾンビや大型の熊なんかはこれで作られたのだろう。


一般的な生物や魔物というものを基本に生み出す前にある程度色々弄れるようだ。ゲームのキャラクリみたいな印象を受けたのだった。生物を丸ごとデザインする……遺伝子改変なんてチャチなもんじゃなく神の領域だ。


「さて可能性の獣、スライム君」


俺はスライムをモデルにいじってみることにした。

スライムはいろんな作品で出てくる伝統的な魔物だ。強さも千差万別、正しく可能性の獣である。


魔石を核とした液状の生物。

水風船のように簡単に割れて死ぬようなやつから物理無効で強力な酸の体を持つようなものや多様な属性を持った魔物としても描かれる。


ただ残念ながらスライムは酸性の液体で物理耐性があるようなそんな強い魔物ではなく、水風船みたいに丸さのすぐ割れそうな体で、ぴょんぴょん跳ねて自分を体当たりさせることしかできない最弱の魔物だった。


ステータスはこんな感じ


名前・スライム

種族・スライム

スキル・〈跳ねる〉

消費DP10


スキルが酷い……その水っぽい体、液体操作とかではなく跳ねることでしか移動できないのかと思われる。

大きさは50cmくらいの最弱のモンスターだった。子供の蹴りにも負けそうだ。それなのにDP10も使うのか……


まぁとりあえず最小化してみる。


できるサイズは5mmまでだった。

名前と種族がベリースモールスライムになった。消費DPが1になった。


他にもこれ以上弱くしても消費DPは少なくならなかった。最低値は1か。


大きさと消費DPの最低値がわかった。


ウィルスとかにして気づかれずに人間を殺す魔物を作りたかったのだが、それは叶わなかった。


そもそも、人間と戦える魔物を考えた時、真っ先に対処しなければならないのは銃器の存在だ。

鉄砲、火器、火薬の爆発を用いた遠距離射撃武器、ただのゴブリンとかでは即死だろう。

だから小さくして当たりづらくするのは有効ではないかと思った。

普通のダンジョンマスターが出してきた。ゾンビや熊もある種、正解な気がするが、それを創り出す能力と資源は俺には与えられなかったのだから、別の答えを探す必要がある。


「しかし、5mmってどのくらいだ?」


この脳内デザイン機能、数値とかは表示してくれるがそれを実際に動かしたり、こうARみたいに空中に投影して見比べてみたり、なんてことは出来ないみたいだ。


スマホで検索……いやAIに尋ねてみるか。

検索しようとするとなんらかの生物のグロ画像が表示されるだろうからな。


スマホアプリでAIに質問できるので、そこで「5ミリくらいの生物ってなんですか?」と聞いてみた。

微生物とかミジンコとか明らかに5ミリより小さすぎるものや菌類とかノミとかダニとかイメージしづらいのなんかも出してきたが、大体の大きさは、蚊の成虫ぐらいだということがわかった。


「ほー、蚊か、いいかもしれないな」


蚊は最も多くの人間を殺してる地球最強生物の一角である。


正確には人を殺してるのは蚊が媒介するウィルスで蚊自体は最弱か……だから俺も蚊を魔物化できるんだけど。


スライムを蚊型にしてみる。

蚊を魔物化してもよかったが、その場合いくら魔物化で強化されようが、元が昆虫では殺虫剤ですぐ死にそうだったからスライムで試す。


うっすらと水色の蚊が誕生した。

消費DPが1の範囲でできるだけ強化する。

飛行能力と針を強化だ。

静かに飛び、当たりどころが悪ければ人に死をもたらせるような魔物……いや、殺すだけじゃない。ゾンビの発想をパクろう。


ステータスは以下の通りになった。


名前・スライム蚊

種族・スライムノーマルモスキート

スキル〈蚊〉

消費DP1


針を突き刺し、殺害もしくは吸血するそんな魔物の完成だ。


そしてそんな魔物の中に紛れ込む魔物も作る。


名前・スライムカース蚊

種族・スライムカースモスキート

スキル・〈蚊〉〈呪い〉

消費DP10


人間の肉体を呪う。

呪いは対象を蝕み、戦闘能力を喪失させる。

具体的にはダンジョンを潰す為に戦おうとすると徐々に身体機能を喪失し最終的には死に至る呪いだ。

デメリットとして対象の肉体を強くする副次効果もつけておいた。

相手を強化するようなものをつけると消費DPが安くなったのだ。

魔法というのは思った以上に便利なものだった。

解呪などの手段もありそうだが、現在の人間には魔法に関しては手が届かないものだろうからこう言った魔法要素は積極的に使っていきたかった。


ゾンビに噛まれるとゾンビになるそんな魔物がいるというネットの情報から発想をパクった魔物の完成だ。


流石に蚊だけでは心許ないので、安価な魔物として魔物事典から俺はスケルトンを作成した。


お決まりどころといえばゴブリンも考えられるがあっちは不潔で欲で動くイメージがあるし、実際そういう魔物のようだった。


骨でできた歩く骸骨は無機質で命令に忠実な人形として使えるものだった。

貧弱な剣や盾や弓などの武器もセットで召喚できた。


名前・ノーマル骨

種族・ノーマルスケルトン

消費DP・15


「ひとまずこれが俺の主力となる魔物だな」


スケルトンに関して細かく弄るのは後にしよう。スキルもないただの歩く骨だ。


それよりDPを生み出せる魔物が作れないか考えてみようかな。

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