第7話 難破船
難破船と言っても、ただ壊れただけならとっくの昔に修理して復帰していることだろう。
きっと、なにか修理ができないような理由があるんだろう。
海賊に皆殺しにされて、遭難ポイントがわからないままになっているとか?
でも、それなら海賊に利用されていそうだよね。
海賊は民間船を手に入れて武装を取り付けるなどの改造をして利用していることが多い。
とはいえ、大半の海賊は船を手に入れるために民間船を襲うことは少ない。
船なんてデカブツを曳航していると素早く逃げれないからだそうだ。
馬鹿正直に中古船を購入して改造しているような海賊は想像しがたいものがあるけどね。
法的執行機関が貧弱な辺境では、曳航していても星系軍が駆けつけてこないこともあるのだとか。と、ナヴィさんが言っていた。
今回のパターンは少なくとも、海賊に目星を付けられた船ではないと思われる。
もしくは、曳航できないくらい船が壊れているか、海賊が手を出さない何かがあるかとなる。
「なんであれ、まずは調査からだね。」
『そうですね。ドローンを向かわせました。』
とりあえず、追加のドローンをバシバシ飛ばしているナヴィさんを応援しつつ、俺ができることは無いのでひたすら受験勉強です。
危険物取扱系と自衛武器取扱の4級を合格すれば、デブリ迎撃用の小型レーザー砲の所持が認められるんですよ?
資格なんてなくてもみんな使っているだろうし、いちいち取り締まられないと思うけどさ。
出自がこの上もなく怪しいので、それ以外の部分はとれもクリーンな状態でいたい今日この頃です。
どうせどこぞのご落胤なんて大逆転な話はないんだろうし。
港湾管理局の下っ端役人が、袖の下欲しさにいちゃもん付けてくるぐらいでしょ?
払っちゃえばいいじゃないのとか思うけど、払えないくらい貧乏なんだからしょうがない。
「こう言うのも親ガチャとか言うんかね?親とか知らんけど?」
『さぁ、ママの胸に飛び込んでおいで?』
その丸いボディのどこら辺が胸なんですかね?
そんないつものやり取りをしつつ、模試をナヴィさんに出してもらって及第点を出せるまで例題問題を繰り返す。
前世の記憶じゃこんなに必死に勉強したことなんてなかったなぁ。
過酷な受験も未経験と言う感じなので、そもそもそんな努力するような性格じゃなかったんだろうな。
良いところの出身という記憶も無いんだけどね。
いまだに採掘コロニー内に入っての受験とか無いけど、どこまでオンラインで資格ってとれるんだろう?
重力空間内でまともに歩けるとは思えないんだよ。
毎日やってる無重力健康体操じゃ1G環境に対応できるとは思えないんだけどね。
採掘コロニーでは、ジャンクパーツを売ってジャンクパーツを購入する感じ。
正しく修理できたか?どこが悪いのかなどを調べる検査機器って高いんだよね。
ゴミ捨て場から拾ってきた機械類は、何とか修理して使えるようにするんだけど、修理するにも検査機器ってのは重要なんだ。
どうしても足りないパーツは出るもので、そういうものを採掘コロニーのジャンク屋から購入することになっている。
最初のころに比べて修理に使える機器が増えたことで、作業効率も上がっている。
特に数が必要なドローンの修理には助かっているみたい。
俺が身近に感じるものと言えば、簡易宇宙服かな?
ただのヘルメットが、実はヘルメットのシールド内側にヘッドマウントディスプレイの機能があったり。
それに、気休めくらいだけど倍力機構なんてのもあって、重力物を動かすのも楽になった。
酸素や熱交換の循環器系も修理により稼働時間が1.5倍くらいにまで伸びているみたい。
良く今まで使えてたね。ってくらい壊れる寸前だったのかも?
スクーターなんかも2割は推力が上がったらしいし、燃費がすごい改善されたらしい。
この調子であらゆる部分が改善されて行っている。
疑似重力パネルも居住カプセルに導入する予定で、0.1Gの重力下で生活することになるらしい。
俺の慣れに合わせて荷重は増やしていくんだとか?
骨を鍛えるためには必要なことですとナヴィさんに説教されるけど、寝返りも打てないことになりそう。
あ、順調に資格は取得して行ってるよ?
推進剤の節約のために、受験するときは複数の資格を受験するんだけど、航法の初級は落ちたんで、星系内の超高速航行はまだ出来ないか。
スクーターにはそんな装置はついてないけどね。
そんな感じで資格試験を繰り返し受けていたところ、難破船に関しての調査に進展があったみたい。
「結構時間かかったんじゃない?」
『うっかり海賊と鉢合わせするとシャレにならないので、慎重に捜査していましたし、単純に遠いのです。』
遠いのか。
スクーターで片道三日くらいの距離らしいので、普通の宇宙船なら近いといえる距離なのかも?
『難破船は中型貨物船で艦首付近が破損しており、現在は小惑星にめり込む形で座礁しております。』
「小惑星にぶつかるのって、すごい低い確率なんじゃないか?」
『停船を目的にわざとぶつけたのかもしれませんね。』
あぁ、前世の大戦で沈みかけている戦闘艦が転覆を避けるために浅瀬にわざと座礁するって話を聞いた気がする。
にしても、そんな都合よく小惑星なんてないんだよ?
採掘業者だからその辺はわかるんだ。
小惑星帯と言うイメージから想像するにはあまりにも小惑星の間隔は広い。
隣り合う小惑星を目視で見ることなんてできないくらいには離れていたりもする。
そのくらいには間隔はスカスカなんだよ。
「なんか詳しく聞くのが怖いけど、それで自力で航行できそうなの?」
『行ってみないと内部の調査はいかんともしがたい部分も多いですね。』
「だと思ったよ。」
そんなわけで、片道三日と言う距離を移動して目的の小惑星を目指すことになった。
まぁ、救急カプセルを展開して中でお勉強していただけなんだけどね。
すぐに必要になるので、船体修理や電子機器の制操作方法に機関の整備方法なんかを学習しながらになる。
付け焼刃の知識でも、やっちゃダメなことくらいは真鍋詰んじゃないかな?
加速度にもよるけど、最初にドカンと加速して長く慣性航行するより、ゆっくりでも加速し続けた方が最終的な加速度は大きくなる。
俺の体がもたないから急加速はご法度とも言うけどね。
そんな感じで、一日半を加速に使い、一日半は減速に使う移動だった。
予定通りに到着したけど、小惑星上の塵芥で船が見えないのよ?
おかげで今まで見つからなかった可能性が高いらしい。
当初、探査ドローンはもっと換金率の高い超惑星は無いかと探すために放っていたらしい。
そのため、サンプル調査を行う時のデータを持ち帰っており、数値を調べたナヴィさんが船があるかも?と思ったらしい。
周辺調査を続けているドローンにリンクしてデータを更新すると、ワイヤフレーム上の調査結果が表示される。
明らかに船の形のワイヤーフレームが構築される。
というより、既に艦首側の穴から内部に侵入しての調査まで始めている。
ドローンに案内されるように、データに従って艦首付近にスクーターを停める。
アンカーで固定して、いかにも船殻と言う人工物の穴から入ってみた。
これが船主付近の破損個所なのかな?
突起などで宇宙服を破かないように注意しながら、中を照らす。
むき出しのためか、塵芥まみれになっていたけど、埋まるほどじゃないので通路であるとわかる作りだ。
砲撃後で激しく壊れているんだけど、面影はあるからね。
少し船尾に向かえば壊れていない通路になったし。
電力喪失しているし、破損状態もひどいけど、宇宙空間なので地上みたいに錆で朽ちたりしていないのはいいかも?
プラなら紫外線でぼろぼろになるか。
宇宙時代になると、地球由来の木材や石油化学製品なんかは使わないものなのかもしれない。
「頑張って調べるぞ!」
手持ちの酸素は7日分なんで、調査期間は1日くらいなんだけどね。
持ち込んだ船内探検用のドローンをひたすら設置しまくって、あとはナヴィさん任せが正解かもしれん。
あと、先行調査しているドローンの補給を行って、データを吸い上げるのも大事な仕事だね。
輸送船だったらしく与圧区画の格納庫もでかい。
非与圧区画の格納庫はもっとでかいみたい。
今はどちらも真空だけどね。
連絡艇もあったんだけど、脚がもげてて格納庫内を転がったのか、あちこちがへこんでた。
ぱっと見でも折れ曲がったりしていないし、この連絡艇だけでも当たりじゃないかな?
これもドローンに調べてもらうようにターゲットマーカーを設定しておく。
「次は機関室かな?吹き飛んでなきゃ良いけどなぁ。」
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