第3話 出会い
過酷な現状を生き残るための生命線とも言えるのが、このゴミ捨て場である。
今までは空腹を満たすために非常食をかき集めていたが、今後は何でもかき集める方針に変更した。
とは言えやはりわかりやすいのは赤いパッケージの救急キットだ。
最初に持ち帰ったのもこの救急キットだったので、それ以降はこればっかりかき集めていた。
消費期限的なルールがあるのか、結構な数が捨てられているし、中身は色々なんだけど保存食と飲料水に少量の医薬品は確実に入っている。
今の年月日もわからないので、どのくらい起源から過ぎているのかとかわからないんだけど、そうそう痛むものではないようで、腹を下したことはないかな?
明らかにやばそうな水ステーション配給品に比べると、はるかに安全で満足感があったりする。
発電用フィルム、ケーブル、タブレットっぽい端末、観測ドローン、簡易宇宙服、ありとあらゆるものが捨てられている。
さすがに生ごみは無いので、その辺は船内もしくはコロニーの処理場みたいなところが処理しちゃってるんだろうな。
数十キロはある採掘後の穴だらけになった小惑星には、所狭しとゴミが詰め込まれていた。
今の俺には宝の山である。
どれだけの深さでゴミが詰まっているのかわからないが、片っ端から拾っている。
タブレット端末なんて、100個くらい拾ったけど、使えるのが1つ合ったので、結構いい打率なんじゃないかな?
ディスプレイの一部が映ってないけど、文字をカメラで読み込ませると読み上げることができるんだ。
読み書きのチートが無いので、読み上げの出来るタブレットは神かと思ったよ。
あと、翻訳してって言ったら翻訳してくれた未来のアプリに万歳です。
あんましうれしくて片っ端から読み上げさせて、いくつかの単語を覚えれたよ。
効率悪いけど、都合良く教科書とか落ちてないもんな。
未来の世界は紙媒体の世界じゃないんだろうなぁ。
そんなわけで一日の半分はゴミ拾いと、そのゴミが使えるか確認する時間となる。
数日に一回の頻度で業者がゴミ捨てに来るので、その後に比較的消費期限の新しい食料を求めて近くを漁ってみたり。
一方で、広すぎるゴミ捨て場を資材を求めてさまようことも多い。
せっかく拾ってきても壊れていたり、それが直せないレベルだったりと、やはりゴミとして戻すなんてことも多い。
「非力な俺。ファイトーッ!」
掛け声をつぶやきつつ、曲がった棒で梃子の原理を無重力で体現!とばかりにひっくり返している。
これ、金属なのかな?よくわからんけど頑丈っぽい棒だ。
プラスチックみたいにも見えるんだけど、こんな宇宙線を浴びまくってても平気なプラとかないよねぇ。
今は折れないだけでいいか。
急に勢いよく倒れてごみが散乱し、ゆっくりとゴミの山が崩れてきていることを確認した。
「やべっ!?」
ゆっくりでも数十トンの質量なんてことが当たり前にある現場です。
慌てつつも左腕に装着しているテザー射出機を使って、10mほど離れたところに停めてたスクーターに磁石を接続して巻き上げる。
緊急時にはこういう移動が速いね。
狭い範囲での移動には結構重宝しているんだよね。
勢いありすぎると肩抜けそうになるし、減速できなくて叩きつけられるので手足で衝撃を逃がすのは必須です。
今回は失敗してスクーターに叩きつけられた痛みにこらえながら、後ろのゴミを見ると、ゆっくりと崩れて行っている。
微小重力なのに思ったより落下するな。
不思議な光景だ。
慌てて逃げなきゃゴミの山に挟まって抜け出せなくなるところだったのかな?
今転がり落ちてきている棺桶っぽいものに嫌な感じがするんだよね。
まさか中身が入ってないよね?
そんな気持ちを抑えきれずに、円筒形の物体に近づくとコンソールっぽいものがあるよ。
「あぁ、嫌な予感…。」
胃が痛くなりそうになりながら、コンソールに触れても反応は無い。
わかりやすいスイッチも無いので、どうすればいいか分からないな。
バッテリーが上がってる感じか?
スクーターからケーブルを引き出して、コネクタを差し込むとコンソールに赤い点滅するランプがともった。
「ビンゴ。」
充電が始まったみたいだね。
スクーターの電力が無くなると帰れなくなるので、適度な所で止めておかないとなぁ。
数分の充電でケーブルを引き抜いたけど、コンソールが起動したのでほっとする。
しまっていたタブレットを取り出して、コンソールの文字を読み込ませる。
タブレットからはヘルムへ短距離無線で音声を聞き取るようにしてあるんだ。
「やっぱりだよ、ちくしょうめ!」
この筒がコールドスリープカプセルな上に、中身の死亡が確認できたわ。
冷凍期間が長すぎたのか、最初からお亡くなりになっていたのかはわからないが、ともかくこのカプセルの中の人は亡くなっている。
ゴミ業者はゴミ以外にも死体も不法投棄しているらしい。
ゴミだけじゃなく死体処理もとなると予想よりもっとやばい犯罪者じゃないか。
話かけて助けてもらえないかとか、最初に考えてたけど、やめておいてよかったよ。
どっちを向いても無法者だらけで涙が出そうだ。
そしてカプセルは一つじゃない。
助ける義理は無いと思うし、こんな状態の俺からすれば人助けをする余裕なんてなかったりもすると思うんだ。
でも、あとになってから後悔するんだ絶対。間違いない。
腹が立つけど、確認して生存者がいたらと思うと調べずにはいられない。
それがもしかしたら海賊とかの犯罪者かもしれないとしてもだ。
「くそっ!」
お人好しな自分にイラっとしつつ、コネクターをつないで数分充電してから確認する作業を続ける。
この日だけじゃ終わらなくて、翌日は拾って使えることを確認したバッテリーを持ってきて確認作業を継続した。
電気系を増設していてよかったなぁ。
結局、100個以上のコールドスリープカプセルを確認した。
圧巻の生存者ゼロである。
苦労の割には何もうれしいことはなかった。
いや、後味悪い思いをしなかっただけでも良いのかもしれない。
だけど、1つだけ変わったものを見つけてしまっていた。
人ではなく、アンドロイドである。
ロボットと何が違うのかはわからない。
コンソールの記載内容を見るに、生体素材を多用しているため人間向けの睡眠処理設定が有効なようだ。
説明を読み上げてもらっても、へぇそうなんだね。としかわからんのだけれども?
コンソールの記載では生きているとも死んでいるとも出ていない。
人間じゃないのなら、ボディはダメになっていても頭脳は無事かもしれない。
そんな一縷の望みにかけて充電を継続しているんだけど、反応は無いんだよね。
コンソールを確認して、カプセルのインターフェースとアンドロイドさんがリンクしているのは確認できた。
許可出したからね。
あとは充電されるとアンドロイドさんにも充電されるはず。
もう少し待ってみよう。
とりあえず、使えそうなごみをかき集めて戻ってきてみたら、コンソールが点滅している。
「メッセージキター!」
大喜びしつつ、タブレットで読み込むと『誰かいるのですか?』と書いてあるみたい。
タブレットをコンソールに有線接続し、メッセージを吹き込んでコンソールに表示させる。
うわぁ、面倒なやり取りだな。
とにかく、死んでいないのなら持ち帰ることにする。
居住カプセルまで戻ったら、ゴミ捨て場で拾った救命カプセルの大きめのやつを箱から出す。
これは遭難時に展開して救助が来るまで耐えるためのもので、救命ボートの宇宙版みたいなやつである。
居住カプセルにはどうやってもコールドスリープカプセルは入らないので、これに入れるつもりだ。
救命カプセルを展開する前に、中にコールドスリープカプセルを格納してから、ジッパーを引き上げて閉じる。
簡易エアロックを取り付けて、酸素ボンベを開くとどんどん膨らみ始める。
ゴムボートのように空気圧でフレーム部が膨らむと、立派なカプセルになってくれた。
あとは中身が動かないようにテザーで固定しておいた。
使い捨ての酸素、熱交換ユニットはこんなカプセルでも1週間は持つので、後で増設とかしなきゃかな?
簡易エアロックから外に出て、居住カプセルとしっかり固定して流されないようすればとりあえずの改築完了だ。
あとで、発電フィルムから電力をとれるように改造しなきゃだな。
実は俺の住む居住カプセルより、アンドロイドさんの救急カプセルの方がでかかったりする。
「さぁ、アンドロイドさんとお話をせねば。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。