第2話 ルーティンと清掃活動
体調は悪い。けれど仕事はしなきゃならない。
ブラックを超えた奴隷労働なんですよ。
一定の期間内に水スタンドに採掘した氷を持ち込まないと、死んだと判断されてしまうんです。
その後は処分されるか補給物資が無くなるかして結局死ぬか、どちらかかな?
だから体調云々言ってられないんだよね。
「来世でもブラックとか笑えねぇ。」
なんて言ってみても、前世の記憶は曖昧で、そもそも仕事していたのかすら覚えていないんだけどね。
そんなわけで、スクーターで数分の近さを誇る我が職場へ。
数キロはあるようなサイズなので、個人的に思ってた「小」惑星より大きいかも?
惑星に比べればめちゃめちゃ小さいので合って入るんだけどさ。
某アニメの宇宙要塞も、あの大きさで小惑星だし、一言で小惑星と言っても色々なんだろうね。
そんなことを考えているうちに、表面に設置している採掘機ステーションまでたどり着く。
微小重力なので、落下と言う感じはしないんだけど、強めに逆噴射をかけるとレゴリスが舞い上がって視界が悪くなったりあちこち砂やすりかけたみたいに傷だらけにされたりと、面倒なことになるので注意が必要です。
採掘機ステーションのフレーム上部にスクーターを停止させてフックで固定させる。
停めるときにはどこかに固定。これは絶対です。
忘れると、場合によっては戻る手段を失って死にます。
ステーションの氷生成機のタンク、と言うより倉庫を開けて一塊100キロくらいありそうな氷をどんどん輸送バケットに移動していく。
バケットと名付けられてるけどただのでかい網なんだよね。
底引き網漁でもしそうな感じだけど、それより軽くて丈夫みたい。
素材は知らないけど未来のすごい技術でできている感じ。
ほぼ無重力であったとしても、100キロを動かすのは大変なんだよ。
無重力育ちの子供には厳しい作業だけど、毎日してればそれなりのコツがわかるもんです。
ピッケルみたいなので氷を引っかけて、てこの原理で持ち上げてテンポよく外のネットに放り込んでいく。
勢いをつけすぎたり、だんだんたまってくるとネットから漏れるので、時たま調整していく。
ミスっていくつか飛んで行っても気にしないのがポイントかな?
そんなこんなで数トンの氷を移したら、スクーターで輸送開始。
「重っ。」
重すぎて動かないけど、それでも推進器を吹かしすぎたりするのはダメ。
質量がでかいので、どうしてもゆっくりになっちゃうんだよね。
そして、加速したら減速しなきゃならないのが宇宙です。
これが一番時間がかかるんだけど、輸送するだけで片道2時間くらいかかるんだよ。
特定の間隔でビーコンを発している水ステーションに何とかたどりつくと、水タンクというか氷タンクに持ち込ん氷を放り込んでいく。
ここは口が大きいので輸送バケットを接続してどんどん押し出していくだけ。
それほど時間はかからないのが救いかな?
大変は大変だけどね。
その後、スタンドの認証システムにスクーターのパネルからアクセスすると、運んだ量に見合った食料や酸素などの必需品を受け取ることができる仕組みなんだ。
お金とか見たこともないよ。
食料は怪しげなジェルパックが少量で、切り詰めてもせいぜい二日分くらい。
食料とは別支給になっている飲料水なんて濁ってて、この水を飲むくらいなら、採掘した氷をろ過してのんだほうがましかも?ってくらいだ。
ここでもらえるもので必要なのは、酸素と二酸化炭素フィルタくらいじゃないかな?
あぁ、次回予約とかしておけば、宇宙服の修理用の資材とかを少量だけもらえたりとかはあるかも?
壊れてからもらいにくる方法が無いのがアウトな仕組みだよね。
こんなの報酬とは言えないよね。
「文句言っても誰も聞いてないだろうし、こんな違法な水ステーションに来る奴は同じ穴の狢だろうしな。」
水ステーションは、通常はコロニーで購入する浄水を10分の1くらいの値段で販売するモグリの売店のことだ。
飲料や生活用水の他に、推進剤としてもつかわれるので宇宙船には水は必須だ。
こういう所の水はコロニーで販売されている浄水に比べればひどいものだけど、激安なら利用するお客さんは要るんだよね。
特に普通のコロニーを利用できない海賊なんかには好評みたいよ?
こういう所を経営するのも犯罪組織なんで、売るのも買うのも犯罪者とかもうね。
そんなわけで、さっさと立ち去らないと面白半分に殺されかねない。
端末操作をちゃっちゃと終わらて、速やかに立ち去るようにしている。
昔はこれを二往復もしくは三往復して、食料、水、交換用資材を集めてたんだ。
でも、最近は一回しかしていない。
ある日、ゴミの不法投棄をしている業者を尾行してゴミ捨て場を発見したんだ。
それからはゴミ拾いをした方が遥かにマシであることに気づいたんだよね。
なので、生存確認のための一回はするけど、それ以上はしなくなったんだ。
ゴミ捨て場で拾った救急キットの中にある、飲料水と栄養パックの方が遥かにマシなものなんだよね。
たとえそれが、消費期限が過ぎていたとしてもね。
救急キットの赤い箱を丸ごと持って帰ることが多いので、医薬品も手に入っているのは今回助かったよ。
体調悪いので、今日はこのまま帰ることにする。
あたりまえだけど空荷だと早く帰れるなぁ。
この体は無重力でカスシウムの溶け出して、骨もスカスカだろうから加速が怖いよ。
居住カプセルに到着したら、係留用ケーブルを接続する。
この係留ケーブルは居住カプセルから電力の充電と推進剤を補給も出来る優れもので、毎回確実に接続しないと充電と補充に数時間かかって焦りまくることになる。
居住カプセルの電源は、小惑星の陰から出している太陽光発電フィルムをトラスで帆のように張って行っている。
そこから細いケーブルが居住ポッドにつながっており、電力が補充されている。
こんな太陽から遠いところでも結構な発電量を誇る大事なエネルギー生成装置だね。
水屋さんとしての一日の作業はこんな感じ。
エアロックで宇宙服を脱いで、食べ物と薬を口に放り込んで飲み込むと気絶するように寝た。
若いのに回復に数日かかったあたり、かなり体力が無いらしい。
「そりゃ前世を思い出しもするよね。」
数日寝込んだおかげでだいぶ回復したけど、回復より前に食料、飲料水、薬が乏しくなってきたのでゴミ拾いに行こう。
その前に掃除をしようかな?
今までは指示されてもいなかったので、掃除とかやっとことないんだよ。
壊れているかのチェックはするんだけどね。
掃除するほど物を持っていないというのもあるしね。
なんであれ、清掃もせずに使い続けていきなり壊れたら命にかかわるものが多すぎる気がするんだよ。
調べると、居住カプセルの熱交換器や空気生成器なんかはフィルタが付いていた。
電気系、熱系、循環器系などは掃除したり交換したりするパーツはいくらでもありそうだよね。
フィルタ系は交換品がほぼ無いので埃を落として洗えるタイプは洗うってだけ。
取り外せるものはどんどん取り外して、エアロックをうまく使って減圧ダクトを利用した空気ブラストでゴミを吹き飛ばしていく。
洗えそうなものは宇宙服のアンダーから着替えになども、水と真空低温を利用した脱水方法を利用して簡単な洗浄もしていく。
トイレなんかも外せるものはみんな外して洗浄してみた。
手間がかかるのにカプセルは狭いからか、すぐ終わったわ。
本当は交換必須なんだろうなぁ。とか思いつつ、居住カプセルの外も清掃していく。
トイレなどのごみ投棄用の気密ダクトとか、放熱器のフィンの汚れなんかもブラシでこそいでいく。
小惑星から飛び散ったレゴリスとか地味に積もってるもんなんだね。
発電用フィルムにそのフィルムを張るトラスなんかもレゴリスを払い落としたけど、結構大変だな。
ついでにスクーターも掃除した。
推進剤代わりの水をろ過するフィルターは驚くほど詰まっていたが、洗浄してなんぼかましになったかもしれない。
おおよそ半日くらいかけて採掘機ステーションまで清掃した後、生存確認のための氷運びをして残りの時間でゴミ拾いに向かうことにした。
やっと本題のゴミ拾いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。