戦い②
「痛い。痛い」
カプセルの中で目を覚ますと、腕の周りの電熱線が真っ赤になって、俺右の上腕部を焼いていた。
夢で起きたことは、このカプセルの中で現実に起こるように設定されている。
俺は夢の中で、右上腕部を少し斬られた。だから、現実のこのカプセルの中では、右上腕部に当てられた電熱線が作動する。
例えば、夢の中で腕を失ったら、カプセルの中で腕が焼き切られる。ギロチンに掛けられると、首が焼き切られ、死を迎える。
ここに来る者たちはそれを承知で、カプセルの中に入る。
何が原因でこんなことをしているのか? というと、全ては五年前の戦争だった。
水素爆弾が五年前に、世界中で炸裂して、ほとんどの人類は死を迎えた。各国、一万人も残っているかどうかである。
生き残った人々は残存放射の弱い所に移り住んで、さらに生き残りをかけた。
ここはかつて、東京ドームとか呼ばれていた建造物があった場所だ。今は東京ドームの跡地に、二つの五十階立てのビルが建てられている。
日本では唯一、ここが残存放射能がない場所だ。
わずか一万人ばかりの生き残りたちが、日本中から集まって、ここで暮らしている。暮らしているというよりも、安心するために集まってきた。
ここに集まった人は、「システム」を構築し始めた。
全くの焼け野原で、放射能の影響の中、行動が制限されている世界で希望を持たずに暮らしていくよりも、頭に電極をつないで、Alの作る夢想社会に投入されて、そこで生き抜いていく方法を選んだ。
夢の世界なので現実を逃避できるし、夢の中で自由に生ききることができる。
2つのビル全体が「夢見システム」である。
システムの名は知らぬ。ただ、システムと皆呼んでいるので、俺もそう呼んでいる。
頭をカプセルから上げると、一面、ぎっしりとカプセルが並べられていた。一階部分に二百近い、カプセルが並んでいる。
カプセルは白く、何の彩色もされていない。
誰がこんなシステムを作ったのかわからぬ。
よほど頭よい奴に違いない。
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