第11話
「……」
……人数ではこっちが勝ってるし……ここは学園の敷地内。
いつ誰が駆けつけるかもわからないし、今この間にも学園側が攻撃態勢を整えているかもしれない。
……なのに……
雨宮響はもちろん、グリム一味は誰1人としてうろたえない。
この落ち着き様……ちょっと不気味……。
つまり、この雨宮響にはそれだけのチカラと統率力、信頼がある……ってことだ……。
瑞依は今更ながらに鼓動が早くなるのがわかった。
もしかしたら、次の瞬間には自分は死んでいるかもしれない。
まだどっちにも動きはないけど……戦いが始まったら、必ず無事でいる補償はない。
必ず……誰かが傷付く。
……これが……戦うってこと。
命の駆け引き。
……神矢は……本当に、5歳でこんなことを経験したの?
ずっと……こんな中にいたの……?
あたしや爽香を助けてくれた時だって……。
瑞依は、神矢をチラリと見た。
神矢は、霊力を収めることなく辺りを吹雪にさせ、闇に堕ちた瞳で響を睨み付けていた。
その表情は相変わらず無いものの、霊力だけはずっと響とぶつかり続けている。
「……」
……あたし……何を忘れてるんだろう。
一体……あたしはグリムにどう関係してるの?
神矢に何の関係があるの……?
……何なの……
あたしは……誰?
「……なんだか、実感するなぁ」
澪月と睨み合っていた響が、目線を外し笑った。
そんな響に、澪月は訝しげに眉を歪める。
「この戦いは……"新たな戦い"なんだ。
僕達"新たな世代"によって始まる戦い」
「……どういう意味だ」
「もう昔の戦いは終わってるってことさ。
僕達がその戦いの後を継ぐってこと」
響は、瑞依と神矢を見て、それから澪月達を見つめた。
「……僕は……父のようにはいかないよ。
今度こそ、勝つのは僕らだ。
特に……」
響はすっと瑞依を指差した。
「君、記憶を失ったままじゃ、僕には勝てないよ。
協会なんか最早敵じゃない。
君が、この戦いの鍵を握ってるんだよ」
「……鍵?
……あたし……?」
瑞依は戸惑った表情で弱々しい声を出した。
「そう。
だけど、それ以上は教えてあげない。
これを教えてあげただけでも大サービスだよ」
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