第10話

「君達も……学園特殊部隊ってやつ?

たくさん仲間がいるんだね。

それに……良いチカラを持ってるね」



響は先程のような仮面の顔で、口元に笑みを浮かべた。



しかしそれに対して、学園側の人間は誰1人として笑おうとはしない。



皆、響を睨むように警戒心を持って見つめていた。




「……雨宮響……及びグリム一味は、今すぐここを去れ」



澪月が一歩前へと出る。




「……悪いけど、そういうわけにもいかないんだよねぇ。

神矢くんをこのまま野放しにするのも後々面倒だし……彼女は連れて行かなきゃならないし」




「……瑞依に手を出したら……許しません」



強い口調でそう言ったのは、妃だった。




「……妃……」




妃は、瑞依が今まで見たことがないほど険しい顔つきをしていた。




「……だからね、そういうわけにはいかないんだ。

この無意味な争いをなくすためにも、彼女の存在は邪魔なんだよ。

いつ記憶を取り戻すかも、わからないしね」




「……どういうことだ。

何故陽乃が関係する」




「それは……君達に話してもわからないことさ。

彼女さえ渡してくれれば、この因縁も、争いも……すべてが終わる」




「……」




「君達に危害が及ぶこともない。

すぐに立ち去るよ。

……神矢くんだって……君達にとっても鬱陶しい存在なんじゃないの?」




「……てめぇ……」



慧汰の怒りのこもった瞳が響を睨んだ。




「どうする?隊長さん。

2人の犠牲と学園の平和……どっちを取る?」



響はニヤリと嫌な笑みを浮かべる。



まるで相手がどう答えるのか、楽しんでいるようにも思えた。




「……」



澪月は、そのしゃんと伸びた背筋を際立たせたまま、ただ黙っていた。




「そんなのっ……言うまでもありませんわ!

瑞依は絶対に渡しません!」



そんな中、口を開いたのは妃だった。




「俺達がその条件をのまねぇといけない義理もないな」




「そんなことしたって、後味悪いだけだしね」




「私はどちらかを選ぶつもりはない」




慧汰、真樹、ハヤもその後に続いた。




「…………と、いうことらしいな。

こいつらは、言い出したら俺が何を言ったところで……聞く奴らじゃない」



黙っていた澪月が、僅かに笑みを浮かべ、静かにそう言った。




「……」




……先輩……みんな……。




「…………そう。それは残念だな。

君達はやっぱり、馬鹿だ」




「……どうかな」




澪月の鋭い瞳と、響の読めない瞳が、静かな空気の中で互いに火花を放っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る