第8話
「……獅功様」
その時、一味の中でも年のいった、威厳あるガタイの良い男が、響を呼んだ。
左眼を縦に走る傷跡が、一層威圧感を与える。
響は一瞬ハッとしたような表情をした後、再び偽物のような笑みを浮かべた。
「……そうだね……。
君はやっぱり、僕の一番嫌いなタイプ」
響は、ふっと鼻で笑う。
それが、瑞依には何故か自分自身を嘲るような笑みに見えた。
響の本当の感情が、見え隠れする。
人間味のない瞳の、奥底。
誰も気付かなくても仕方がないような奥底に、何かがある。
震えるほど怖いと思ったけれど、この目の前の少年は確かにまだ、自分とさほど変わらない齢なのだと感じた。
「……ねぇ……あんたは…………幸せ?」
「……!」
瑞依の言葉に、響の表情が固まる。
瑞依は真剣な瞳で、そんな響を見つめていた。
「…………何のつもり?
それ……僕に言ったの?」
「……そうだよ」
目を見開いた響のその表情が、ワナワナと震える。
「……獅功様……」
「……柏木……やめた……。
やっぱりこの人も、ここで痛い目に合わせた方がいいみたい」
「……」
柏木は傷跡が走る左眼を開き、響を見つめた。
その瞳が、少し切なく揺れる。
「こいつ……許しちゃいけないよね……。
僕に刃向かう奴は……許さない」
「……!」
突然、響の霊力が一気に溢れ出した。
次の瞬間、瑞依のシールドに響の手が近付く。
「……っ……!」
……やばっ……!
間に合わなっ……
-バーンッ…!
「……!」
響が瑞依に向かって伸ばした手に、一つの霊弾が飛んできた。
それを瞬時に片手で止めたのは、柏木。
「……獅功様には指一本触れさせん」
柏木は霊弾が飛んできた方を見て低く唸った。
「……ならば、俺の隊員達にも指一本触れるな」
「……!澪月先輩……!」
霊弾を放ったのは、どうやら澪月のようだ。
柏木を睨むように見つめ、瑞依達に近付いてくる。
「……先輩……どうして……」
「……お前……後で覚悟しろよ」
澪月はいつもより二倍程凄みのきいた瞳で、瑞依を睨みつけた。
……っ……こ、怖っ……!
「……ご、ごご……ごめんなさ……」
瑞依は、一瞬響のことを忘れる程澪月が恐ろしく感じた。
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