第7話
「……思い上がるな。
貴様など、獅功様の足元にも及ばん。
穏便に進めたいという獅功様の思いがなければ……貴様の父親の罪で即刻処刑しているところだ」
「……"隼(ハヤブサ)"……いいよ」
響は瑞依を見つめたまま、冷静に言った。
「どうやら礼儀知らずだったのは、僕の方みたいだからね」
響の瞳が、細くなる。
「……えっと、君の今の名前は何かな?」
響は薄ら笑いを浮かべたまま、瑞依に問いかけた。
……"今の"……?
「……陽乃……瑞依」
瑞依は小さく呟く。
「……陽乃瑞依さん……ね。
君は何か勘違いしているようだから、言っておくよ」
「……勘違い?」
「僕は加害者じゃないし、君達は被害者じゃない。
僕も父を失った……君達と同じようにね。
僕のこの憎しみは、誰にも止める権利はない」
「……けどっ……」
"あなたの父親があんな事件さえ、初めから起こさなければ"
瑞依は出かかった言葉を苦い表情で呑み込んだ。
「……君は優しいね。陽乃瑞依さん」
「……」
「僕は自分の意志を曲げるつもりはないよ。
君達に言い分があるように、僕にもあるからね。
だから君達が従わないなら、例えどんなに卑怯で汚くて強引でも……僕はいくらでも手段を変える」
「……汚いって自覚あるんだ」
「……そうだね、多少は。
君達だってそうでしょ?
自分達の正しいと思うこと、何かを成し遂げる為には、汚い手だって必要になる」
「……」
「僕は、何でも綺麗事で解決するほど世の中寛容だとは思わない。
僕からすれば、君の方こそ現実がわかっていない子供に見えるよ」
「……っ」
「僕は、絶対に間違わない。
僕を導く者がいる限り……。
僕には……使命がある」
そう言った時、響の表情が、初めて複雑な心情を見せた。
「……使命……?」
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