第5話
「……」
もう……あたしじゃ神矢を止められない……。
……どうして?
ついこの間まで、悪態をつきながらも……それでも一緒に訓練してくれたのに。
一緒に話して……笑ってくれた。助けてくれた。
すべてを恨んでいるような……何にも関心を持っていないような、神矢。
けど……本当はよく周りを見ていて、深い……思いを持ってる。
なんで、"人間"そのものを否定するの……?
そんな奴の言うことに……惑わされないでよ……。
お願いだから、あたし達から離れていかないでよ。
「……神矢くん、君は学園や協会を支持するの?
この人のことだって……君は許せるの?」
響は冷たい瞳で笑い、瑞依をチラリと見た。
「……」
神矢は黙ったまま、ただ真っ直ぐに響を見据えている。
「……俺は……誰も信じない……。
……許さない……全部……」
「……いいなぁ……神矢くん。
その思想はすごく僕好みだね。
……でも、君は可哀相だよ」
響の言葉に、神矢の眉がピクリと動く。
「神矢くんは、まだ引きずっているんだね。
特殊とはいえ自分も人間のくせに、そんなに人間を恨んでるなんて……やっぱり可哀相だよ。
君は人に愛想が尽きるくらい、酷い目に遭わされてきたんだね」
「……」
「……可哀相。
君が一番、可哀相だ」
響はまた、ニヤリと笑った。
「……っ……」
瑞依の中に、突然怒りが沸き上がった。
無性に、腹立たしくなった。
「……っちょっと……!勝手なことばっか言わないでよ!
何なのさっきから!」
「……」
響の瞳が、瑞依を映す。
「例え……どんな過去を持ってたって、関係ないじゃん。"今"は、今の考え方次第で変わるんだから……。
さっきから……そんな風に見下して、楽しいの?」
瑞依は何の躊躇もせず、響を睨みつけた。
「……」
その時、響の表情が、初めて一瞬だけ怒りを表した気がした。
だが、すぐにそれは再び仮面の下へと隠れる。
「…………へぇ。
"古都武哉"の話はよく聞かされていたけど……さすがは親子だね。綺麗事がお家芸なのかな」
「……だから何の話?
あたしには……ちゃんとお父さんもお母さんもいる。
……そんな名前じゃない」
「……知らないって、怖いことだね」
瑞依を見つめて、響はため息を落とした。
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