第4話

周囲が、突然零下の寒さに陥った。



降り続く雨までもが、神矢の周りでは凍りつく。




「……!」




神矢の特殊能力っ……!




瑞依は、慌ててシールドを張った。



グリム一味もさすがに慌てた様子で、揃ってシールドを張る。



しかしその中で、ただ1人響だけは何一つ変わらず立っていた。




「……それは、僕の誘いを断るってこと?」




「……」



神矢は、何も答えなかった。



ただ、異常な霊力が神矢から発せられていた。




「……っ」




……何これっ……こんなチカラッ……感じたことない!



強いなんてもんじゃないっ……近付けない……!





瑞依は距離をとるように神矢から一歩ずつ後退した。




その時、雨は雹に変わり、ボツボツと大きな音をたててすべてを打った。



シールドを張っていない筈なのに、何故か響の周りにだけ雹は降らなかった。



まるで、雹が響を避けているよう。



響の周囲の空間だけ、何か特別なオーラが漂っているように見えた。





「……残念だよ神矢くん。

君を助けてあげたかったのに」




その言葉に、神矢が鼻で笑った気がした。




「……何か、可笑しかった?」




「……あぁ……可笑しいことだらけだな」



神矢の瞳は、笑ってはいない。




「……全部……笑えるくらい馬鹿らしい……。

……一つ教えてやる。人間に腐ったも何もねぇんだよ。

人間は全部同じ……自分さえ良ければいい……」




「……神矢……」




顔も、目も、オーラも……口調まで違う……。



こうなったら……もう教官達にしか止められない。




瑞依は震える手で、肩をさすった。



それは神矢の能力がもたらす"寒さ"のためというだけではない。



瑞依は、久しぶりに神矢が"怖い"と感じていた。



無意識に震えるほど、今の神矢は恐怖そのもの。



別人のようにさえ思える。




「オマエも……クソジジィも……古都も。

全部同じだ。

……オマエら……所詮"人間"なんだよ」




神矢の凍りつくような漆黒の瞳と、響の刃物のような鋭い紫の瞳が、ぶつかる。



神矢の言葉は、瑞依の心をひどく落ち込ませた。

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