第2話

「バカだね。

今の君じゃ、僕の望む働きは出来ない。

はっきり言って、役立たずもいいとこ」




「……ひ、響様……」




「"獅功"だ。間違えるな」



少年、雨宮響はギロリと紫光る目を男に向けた。




「も、申し訳ありませんっ」




「……」




男の顔は元の青白さを通り越し、まるで響の瞳がもたらしたように紫に近くなっていく。




「……あの結界は、そこらの能力者じゃ簡単に破れるようなモノじゃない。

ある……"呪い"がかけられているな」




「の……呪い……でございますか」




「あの学園に無理矢理侵入しようとする者が、例え結界を越えても、その目的を果たせないようにする。

どうやら相当、生徒達が大事らしい。

君が受けたのは"腕焼き"……かな?」



響が嘲るような笑みを浮かべて男の腕に目をやる。



その男の腕は、もはや火傷というような可愛らしいものではなく


腕全体が焼け、肉が落ち、原型を留めてはいなかった。




「それはただの癒やし能力では完治しない」




「は、その通りでございます。

痛みはなくなりましたが……やはり完全には治癒しませんでした」




「痛いよね、実に痛い。

もう少し、君には期待してたのにね」




「……も……申し訳……」



「もういい。謝罪ばかり聞きたくない」



響は男の言葉を遮り、立ち上がった。




「霊力が一番集まる場所って、どこか知ってる?」




「……い……いえ」




「……手だよ。

手には、昔から不思議な力があると言われていた。

僕たちがチカラを施行する時も、ほとんどがこの手を必要とする」




「……」



男の額から次々と汗が吹き出る。




「……君のその使い物にならない手じゃ、僕の足手まといになるだけだってことさ」

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