第4話 人間界

少年が『イリウス』という名を貰った次の日。イリウスの様子が少しおかしい。


ケルト「どうした?妙にソワソワしてるみたいだが」


イリウス「………ん」


イリウスはお腹の様子を気にしているみたいだ。腹が減ったのか、痛いのか…朝飯もちゃんと食ってたしな〜。ケルトさんは色々な可能性を考えるが痛がってる様子も食べたがってる様子もない。何かよくわからないまま様子を見ておく。そうして時間が経った頃


バク「そろそろ行くぞ」


ケ「へーい」


そう、今日は人間界へとイリウスについて調べに行く日だ。


ケ「俺はちょっと出かけてくるから、お前の世話はトラが見るからな。お利口さんにはしなくて良いぞ」


イリウスは少し首を傾げるが、分かったように頷く。


トラ「くれぐれも警戒を怠らないようにしてくださいね」


バ「分かっておる」


バクはいつもの事かのようにトラさんからの心配を受け流す。そして2人は再び不思議な円を開き入って行った。





バ「よし、誰も居ないな」


そう言いバクは人間界の地に足を付ける。バク達はイリウスの事情を探るべく情報のある場所へ向かうと計画していた。バクは市役所へ、ケルトさんは事件性を加味して警察署本部へ。


バ (とりあえずは顔写真と名前を探らねばな……それにしても数が多いの…)


バクは気配を完全に消した状態で書類を漁る。


市役所員 (ん?何かおかしいような?気のせいか)


役所の人は職場を見渡して何か思うもすぐに環境に支配される。


バ (お、これではないか?)


大量の資料をペラペラしていた手が止まる


バ(なになに、本名は…『佐藤 優斗ゆうと』か。案外普通なんだの)


名前が分かると大量にあった資料を元の場所に戻し、次の資料を探す。


バ(優斗優斗っと……なるほど。2020年に両親が事故により他界、当時8歳であったから今は10歳か。それで引き取る先も居なく孤児院行きと。その場所は……どこだここ?)


バクは資料を眺め孤児院の住所に少し迷う。とりあえずここまで分かれば良いかと資料を元の場所へ戻す。そして屋上に出て電話をかける。


バ{ケルト、ケルト、聞こえるか?}


ケ{ええ、聞こえてますよ}


バ{イリウスの本名だが、佐藤 優斗と言うらしい}


ケ{優斗ですか、分かりました。調べておきます}


バ{それと、事件としてありえるのは2012年から2020年だ}


ケ{分かりました}


ケルトさんは電話を切るとバクよりもしなやかで慣れたように警察署本部に侵入する。そして過去の事件資料に手を取る。


ケ(こんな量あるのか…めんどくせー)


そう言いながら目が追いつかない程の速度で紙をめくる。


ケ (とりあえず佐藤の記事をまとめたが……どれだろうな〜。まぁイリウスはまだ子供だし親に何かあったとしたら30代とかだろうな。だとしたら…これか)


そうして手に取った資料はイリウスの両親について書かれた資料だった。


ケ (うーむ。両親が交通事故で死亡か。ん?イリウスもその場に居たのか!?こりゃあショックだろうなー。犯人が不明?どういうことだ?車が勝手に移動したとかか?でも見る限りそうじゃなさそうだが…車も事故ったけど中に人が居なかったのか。変だな…)


ケルトさんはイリウスに対する哀れみや時間に対する悩みを抱えたまま資料を戻さずに外に出た。


ケ{ご主人様、とりあえず事件については調べられました。合流しましょう}


バ{ああ、分かった}


そしてケルトさんとバクさんは一緒に来た所で合流した。2人とも分かった内容をあらかた説明し終わった所だ。


バ「それでどうする?この孤児院に行ってみるか?別に何も無いと思うが」


ケ「世話をする身としては一応行っておきたいですかね」


バ「分かった。ならば行くか」


そう言い2人は山へ向かった。





ト「そんな本見て面白いのか?」


イ「ん!ん!」


一方イリウス達は上手くやってる様子だ。


ケルト「ほんとにこんなとこに孤児院なんてあるんすか??めちゃくちゃ山なんですけど」


バク「確かに住所がこっちだと思ったんだがの〜…」


バクは悩みながらそう言った。その瞬間


バ「あぶな!!」


ガシャンという音と共にバクがすごい高さまで飛ぶ。


バ「何だこれは、トラバサミ?野生動物でも出るのかここは。本当にあるのか?」


ケ「あ、あれじゃないですか?」


ケルトさんが指を刺したのは薄暗く壁に苔が生えている石で出来た廃墟のような場所であった。だが一応明かりはあるようで稼働しているのが分かる。


ケ「これ……ですか?」


ケルトさんは不安そうに入り口を指さす。自動ドアのように見えるがどうも自動で開きそうにない。誰か管理をしているんだろうか。


バ「とりあえず入るぞ」


そう言いケルトさんがゆっくりと自動ドアを開けて気配を消しながら入った。


ケ「なんか廃病院みたいですね。とりあえず耳すませてみますね」


ケルトさんは耳をすます。


ケ「あっちから声が聞こえます。何の話かまでは分かりませんが」


バ「では行ってみよう」


院内はとても静かで汚らしい。とても子供を置いておく所とは思えなかった。そうして進んで行くと声が段々と明らかになっていく。


子供A「やめて!やめてよ!」


子供B「何でやめなきゃいけないんだー?俺のが年上なんだからちゃんと言うこと聞けよ!」


子供C「うわ!こいつ泣いてる!殴られたくらいで泣くとか情けねーww」


2人とも唖然とした。ガラス張りの部屋があり、3人で一部屋を使ってる様子だが、子供1人を子供2人で殴ったら蹴ったりしているのだ。普通じゃないと確信したケルトさん。体調が崩れている様子だが構わず先へ進む。他にも部屋があったが、3人とも死んだ目をしている部屋、さっきと同じような部屋、自分を偉いと思っている奴同士が殴り合ってる部屋などめちゃくちゃだ。


バ「ケルト、大丈夫か?」


ケ「ええ。問題…ありません」


そう言いながら歩速が早くなってるのを感じる。歩いている間にある所に着く。


バ「ここは、、調理室か?」


着いた場所はおそらく子供達に出す料理を作る部屋。ケルトさんは食べ物とは思えない匂いに疑いが晴れない。調味料等が置いてある所に一つだけ異様な物があるから手に取る。


ケ「サルモネラ…菌?何でこんなのがあるんだ。料理になんて使えねーし使ったところで食中毒になるだけだろ?なのに何で…」


そんなこんなで迷っている時、バクがケルトさんに静かにするようジェスチャーをする。そしてすぐに隠れた。誰かが近づいて来てると思ったがそれは職員らしき人物達だった。


職員A「さぁて、今日も作りますかね。めんどくさいから適当に入れて野菜スープとかにしても良いかしらね?」


職員B「あらAさん、それもう何回もしてるじゃない。まぁ野菜入れてるし後はパンでも出しとけば栄養にはなるかしらね〜」


職員A「Bさんはよく考えてるお人ね〜」


そんな会話をしてそいつらはわははと笑っている。


職員B「あ、あの子達にはこれを入れないとね」


そう言い手に取ったのはさっき見ていたサルモネラ菌だった。不格好に散りばめられた野菜を煮ただけのスープを皿に分け、サルモネラ菌の粉末のようなものをぱっぱと入れる。入れている皿は分かりやすいように他の皿とは違った。それを入れた後食事を持っていく。その食事をどうするのか気になったケルトさんとバクはこっそり着いて行くことにした。

ケルトさんとバクが孤児院に侵入し、食事を作る所を見て、どこに運か着いた行った所。食事は子供達に分けられる。分かりやすく色の着いた皿は虐められている子に与えているのだ。その子は他の虐めている子にパンを取られ、食べれる物が毒入りのスープしかないが食べようとしない。


職員A「早く食べなさい!!そんなに私達が作った料理が嫌なのかい??」


そう言い職員は子供に圧をかける。


いじめっ子達「たーべーろ、たーべーろ」


いじめっ子達も分かっているかのようにスープは横取りしない。そうして圧に押し負けてしまった虐められている子は食べてしまう。職員といじめっ子達にじっと全部食べ終わるまでじっと見られていた。


職員A「なんで初めからそうしないの!」


バシンと言う音と共に虐められている子は吹っ飛ぶ。ケルトさんとバクはとても見ていられないような目をしている。そんな時、ケルトさんの頭に記憶が過ぎる。イリウスが飯を食べた翌日、異様にお腹の調子を気にしていた。食中毒は腹痛や嘔吐が付きもの。それを思い出した途端、ケルトさんは自我を失い全部壊そうとした時、


バク「ケルト!忘れたのか、人間界での掟を!」


バクは極めて小さい声でケルトさんの腕を掴みながらこう言った。


ケルト「人間界には影響を及ぼしてはいけない…」


バ「そうだ。気持ちは分かるが抑えろ」


その後はバクがケルトさんを置いておくのは危険と判断して元の世界に戻る事を決めた。





バ「ただいま」


トラ「おかえりなさい、どうでした?」


バ「まぁ、、、色々だ。後で話す」


ケ「ただいま、イリウス」


イリウス「んー!」


そう言いイリウスの頭を撫でる。イリウスが元気そうなのを見て安心したケルトさん。ケルトさんはこの感情を不思議に思っている。誰かが安全にしていると分かっただけで何でこんなにも安心しているのかと。その後ケルトさんとバクは自室に戻り考える。


バ(一体どうしたものか、、イリウスを帰すにしてもあの孤児院に帰すのはちと可哀想だのー…だが野に放すのも危険だしのー…んー)


ケ(あいつはあんな所で2年も過ごしたのか。毎日あんな不味い飯食わされて、殴られて、蹴られて…それでも勇気出して逃げ出して。俺とは大違いだな、はは……………あの脚の傷も逃げてる時にトラバサミに引っかかったのか。酷ぇ傷だったな、あんなんで歩くとか常人じゃ出来ねーだろ。そんな命懸けだったのか。人間界にあいつの居場所なんてどこにも…)


そう思い、ケルトさんはベットから立ち上がりイリウスの元へ向かう。イリウスのいつもいるリビングに着くと先客が居た。


バ「良いか?こうだ、こう。こうやって木の板と木の棒を擦り合わせると火が着くのだ!」


イ「んーーーー!」


バ「そうだ!それをもっと早くやれば火が着くだろう」


ケ「えーっと。何やってんすか?」


ケルトさんは困惑しながら聞く。


バ「自然で生き抜く知恵を授けているのだ。我も鬼じゃない。あんな場所に帰す気などさらさらないからな!」


バクは自信満々にそう言う。ケルトさんは納得出来ないような、複雑な気持ちでイリウスを膝の上に乗せ、頭を撫でる。そんな姿を見てバクは思う。


バ(1番最悪なパターンは避けたいがの〜)


この先どうなることやら。

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異世界「ローディア」の光 〜神から授かりし物語〜 現代風ハニワ(現ハニ) @3313314556t

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