第4話
瑞依は部屋に戻り、壁掛けの丸い時計に目をやった。
時計の短針が差していたのは、いつも瑞依が布団に入る時間の2時間ほど前の数字だった。
「……ま、いいや。もう寝よ」
今日はもうやる気出ないし……。
てか、まだ3月だし?
受験するにしたってまだ1年はあるんだし?
「……」
瑞依は少しだけ苦い表情を浮かべると、電気を消してもぞもぞと布団の中に潜った。
じわじわと沸き上がってくる罪悪感に気付かないフリをして、目を閉じる。
今はまだ、何にも想像つかないけど……きっと大丈夫。
やりたいことが見つかったら、頑張れるから。
やる気も起きるし、きっと何もかもが上手くいく。
だから……今はまだ考えたくない。
瑞依の悩み、それは将来に何の夢も抱いていないということだった。
何がやりたいのか、何が向いているのか、どの道に進むのか。
それは誰もが一度は経験するだろう問題。
だが瑞依の性格上、誰もが適当にかわすこの問題でも、深刻といえる悩みであった。
そして目的がなければ、何となく頑張るという気さえ起きない。
この問題にぶち当たってからというもの、勉強が手に着かないにも関わらず睡眠不足が続く日々。
毎晩考え事の末に行き着く先は、決まって同じだった。
いつか、きっと……
自分にしか出来ない、"何か"に出会えるはず。
きっと……あたしには、やるべきことがある。
何の確信もないこの思いは、何故か日増しに強くなっていた。
何故か、瑞依にはそんな気がしてならない。
だが、その"何か"がわからない。
それが余計に苛々を募らせる原因の2つ目でもある。
瑞依はそのまま、深い眠りに落ちた。
この直後に、自分の人生を変える"夢"をみることなど
知る由もなく……──
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