第9話 百物語の六話目


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百物語の第六話:神社の境内


旧校舎での出来事の翌日、文芸部のメンバーは学校近くにある古い神社に向かっていた。名前は「瑞祥神社」。長い石段を上ると、木々に囲まれた小さな境内が現れる。朱色の鳥居と苔むした狛犬が静かな威厳を放っている。


「ここって、百物語とか七不思議の話に関係あるのか?」

圭介が尋ねると、律が頷いた。


「瑞祥神社は、この土地の歴史と深く結びついている。学校の近くにあるし、七不思議のいくつかもこの神社に由来するって話だ。特に、ここにある『封印の石』の伝説は有名だ。」


「封印の石?」

亮介が興味深げに聞き返す。


律は階段の脇にある大きな岩を指差した。岩には古びた縄が巻かれ、そこにはたくさんの御札が貼られていた。


「この石の下に何かが封じられていると言われてる。でも、それが何なのかを知る人は少ない。昔からこの神社の宮司だけが秘密を守ってるらしい。」



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宮司との対話


境内で待っていると、小柄で穏やかな表情をした老宮司が現れた。彼は深々とお辞儀をしながら声をかけてきた。


「若い方々がこんな場所に来るとは珍しいね。どういったご用かな?」


律が一歩前に出て、百物語について簡単に説明した。


「……実は、学校の七不思議について調べているんです。その中に、この神社にまつわるものがいくつかあると聞いて、話を伺えないかと思いまして。」


宮司は少し考え込むように眉を寄せた後、ゆっくりと頷いた。

「なるほど。君たちは、あの『話』に触れてしまったんだね。」


「『話』……ですか?」

麻奈が不安げに問い返す。


宮司は静かに続けた。

「百物語はただの遊びではないよ。語るたびに、この世の境が薄くなり、あちら側のものがこちらに近づいてくる。特に、旧校舎はあちらとつながりやすい場所だ。」


「旧校舎で……実際に何かを見ました。」

亮介が慎重に言葉を選びながら話すと、宮司は深く息をついた。


「それは厄介だね。百物語を最後まで続けてはいけない。それが、この神社に伝わる教えだ。」



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封印の石の伝説


「……宮司さん、封印の石について教えていただけますか?」

律が問いかけると、宮司は少し沈黙した後、語り始めた。


「封印の石は、この土地に住む者たちを守るために置かれたものだ。その下に封じられているのは、言葉にしてはいけない存在――それが解き放たれると、この土地には災厄が訪れるとされている。」


「でも、石自体は動かされていないんですよね?」

圭介が確認すると、宮司は厳しい表情で答えた。


「そうだ。ただし、この石に触れるな。この封印が破れると、君たちが見た怪異以上のものが現れるだろう。」


律は黙って話を聞いていたが、やがて宮司に深く頭を下げた。

「ありがとうございます。今後、注意して百物語を進めるかどうか考えます。」


宮司は何かを察したように彼を見つめた後、静かに呟いた。

「どうか、気をつけなさい。百物語の最後に近づくほど、君たちの周囲には危険が迫るだろう。」



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境内での不穏な出来事


帰る準備をしていたその時だった。突然、境内の奥にある古い社から音がした。風のせいかもしれないが、それにしては重々しい音だ。


「……何か聞こえた?」

麻奈が声を震わせながら尋ねると、圭介が懐中電灯を照らして社の方を見た。


「ただの風だろ。こんな雰囲気だから、全部が怪しく見えるんだよ。」


だが、律だけは目を細めてその方向を見つめたまま動かなかった。

「……あそこ、誰かいる。」


全員が息を飲み、しばらく身動きできなかった。だが、次の瞬間、何かが境内の木々の間をかすめるように走った。影はすぐに消えたが、確かに人間の形をしていた。


「逃げた?」

亮介が緊張した声を上げるが、律は首を振った。


「違う。これは……たぶん、人間じゃない。」


全員が青ざめた顔で黙り込んだ。その場には異様な空気が残り、誰もその場を動けずにいた。



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次回予告:不穏な影


神社での出来事をきっかけに、百物語の進行に不気味な影が差し込む。七不思議の真実に近づくにつれ、怪異は次第に彼らの日常を侵食し始める――。


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