第8話 百物語の五話目


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百物語の第五話:旧校舎


文芸部のメンバーは、いつもの部室に集まっていた。だが、いつもと違うのは、その場に漂う異様な緊張感だった。律が用意した一枚の地図――旧校舎の見取り図を机の上に広げながら言った。


「今日の百物語は、旧校舎で話す。」


「旧校舎で?」

麻奈が驚きの声を上げた。


律は頷き、真剣な目で全員を見渡した。

「旧校舎は、この学校の『七不思議』の中心地だ。もしも百物語に関係があるなら、あそこに行けば何かがわかるかもしれない。」


「でも、危険じゃない?」

麻奈が不安げに言うと、圭介が肩をすくめて笑った。

「怖いのか? 俺がついてるから大丈夫だよ。」


「怖くないわけないでしょ!」

麻奈が怒ったように言い返すが、その表情には不安が色濃く表れていた。


亮介は地図を見ながらぼそりと呟いた。

「……行くなら、ちゃんと準備しようぜ。何が起きるかわからないし。」



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旧校舎への足音


夜の学校。月明かりがぼんやりと校舎の影を映し出す中、四人は旧校舎の前に立っていた。


「……ここ、本当に入るのか?」

亮介が躊躇いがちに言うと、律は無言で扉を押した。錆びついた音を立てて、扉がゆっくりと開く。


中に入ると、空気が明らかに違っていた。湿気を含んだ冷たい風が吹き抜け、どこか腐ったような臭いが漂っている。


「……気味悪いな。」

圭介が周囲を見回しながら呟いた。


律は懐中電灯で地図を照らしながら先頭に立ち、奥へ進んでいく。途中、廊下の壁には古い写真や落書きが残されており、誰かがここにいた痕跡がはっきりと見て取れた。


「ここ、本当に誰も使ってないんだよな?」

亮介が尋ねると、律が静かに答えた。

「今はな。でも、かつてはそうじゃなかった。七不思議が語られるようになってから、誰も近づかなくなったんだ。」



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第五話:「鏡の中の手」


旧校舎の奥にある教室に入った四人は、古い机を片付けて百物語を再開する準備をした。ロウソクを一本だけ灯し、話し手として指名されたのは麻奈だった。


麻奈は少し怯えた様子で言葉を選びながら話し始めた。



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「……これは、私が小学生の時の話。ある日、家の古い鏡を見つけたんだけど……」


麻奈の家には、屋根裏にしまわれた大きな古い鏡があった。興味本位で友人たちとその鏡を覗き込んだ時、何かがおかしいと気づいた。鏡の中の自分たちの後ろに、誰かが立っていたのだ。


「最初は、誰かの悪戯だと思った。でも、その『誰か』は鏡の中にしかいなかった。」


それからというもの、その鏡を見つめるたびに、鏡の中の手が少しずつ近づいてくるのがわかった。怖くなった麻奈は鏡を元の場所に戻し、二度と触らないようにした。だが、ある日突然、その鏡がなくなった。


「そして……その日から、私の部屋の中で、『何か』が動く音がするようになったの。」


麻奈が震える声で話を終えると、ロウソクの火を吹き消した。その瞬間だった。



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旧校舎の怪異


廊下の奥から、何かが這うような音が聞こえた。


「……今の、何?」

圭介が囁いたが、誰も答えない。音はだんだん近づいてくる。


「おい、これって冗談じゃないよな?」

亮介が立ち上がりかけた時、律が手を上げて制止した。

「静かに。何かが来ている。」


やがて、廊下の奥にぼんやりとした人影が見えた。それは異様に長い腕を持ち、ゆっくりとこちらに歩いてくる。


「やばい、逃げろ!」

圭介が叫び、全員が教室を飛び出した。廊下を走る足音が響き、階段を駆け下りる途中、亮介が振り返ると、影はもうそこにはいなかった。



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次回予告:真実の扉


旧校舎で目撃した怪異の正体とは? 百物語が進むたびに、彼らは深い闇へと引きずり込まれていく。次回、第六話――真実の扉が開かれる。


続きをさらに展開していきましょう!


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