第6話 百物語の三話目
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百物語の第三話
夜の文芸部室。ロウソクの炎が静かに揺れる中、律が次の話者を指名した。
「今日は麻奈、君にお願いするよ。」
「えっ、私?」
麻奈は一瞬戸惑ったが、周囲の視線に促され、ゆっくりと語り始めた。
「これは、私のおばあちゃんから聞いた話なんだけど……」
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三話目:「呼び鈴を鳴らす少女」
とある田舎町に、小さな古い洋館があった。そこには、住人のいないはずの家が一軒あったという。だが、毎晩午前二時になると、その家の呼び鈴が鳴るという噂が広まった。
ある日、興味本位でその家を訪れた少年がいた。友人たちと一緒に家の前まで行き、勇気を出してドアを開けた少年が目にしたのは、ボロボロになったドレスを着た少女だった。
「……お兄ちゃん、探して。」
そう言い残して、少女は闇に溶けるように消えた。翌日、その少年は行方不明になり、二度と戻ってこなかったという。
「その家の前で呼び鈴を聞いた人は、必ず何かを失う。家族か、友人か、もしかしたら自分自身の命か……。」
麻奈の声が静かに途切れると、部屋の空気が一層ひんやりと感じられた。
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消えたロウソクの灯
麻奈がロウソクの火を吹き消すと、部屋の奥からかすかな音が聞こえた。
「カタッ……カタッ……」
亮介が立ち上がり、音の方を確認しようとすると、律が手を上げて制した。
「待て、動くな。」
全員が息を呑む中、突然ロウソクが一本だけ消えた。その瞬間、部室の窓ガラスに何かがぶつかる音が響く。
「なんだよ、これ……」
圭介が小さく呟き、麻奈は怯えた表情で亮介にしがみついた。
律は冷静に周囲を見回しながら、静かに言った。
「話が終わるたびに、確実に何かが近づいている。これは偶然じゃないな。」
亮介は律の言葉に背筋が凍る思いだった。この百物語には、単なる遊び以上の何かが潜んでいる。
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新たな七不思議:旧校舎の鐘
その後、話題は自然と学校の七不思議へと移った。律が口を開く。
「七不思議の一つに、『旧校舎の鐘』っていうのがある。あれ、誰もいないはずの夜中に鳴るらしい。」
「旧校舎って、もう使われてないんだろ?」
圭介が首を傾げると、律は淡々と続けた。
「ああ、でも今でも夜中に鐘の音が聞こえたって話をする生徒がいる。しかも、その音を聞いた人間は、次の日には必ず何かに巻き込まれるらしい。」
「……それ、確認しに行くって話にはならないよね?」
麻奈が警戒するように言うが、律の目が怪しく光る。
「確かめる価値はあるだろう。何かが起きてるのは確かだ。このまま百物語を続けるだけじゃ見えないものがある。」
亮介は苦笑いを浮かべながらも、心の中でどこか期待している自分がいることに気づいた。
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不穏な影
その夜、文芸部の集まりが解散し、それぞれが帰路についた。亮介は一人で校舎の外に出ると、背後に人の気配を感じた。
振り返ると、そこには誰もいない。しかし、校舎の三階の窓に、ぼんやりとした影が立っているのが見えた。
「……なんだ、あれ……」
影はゆっくりと亮介の方を向き、微かに手を振るような仕草をした。次の瞬間、影は消え、ただの闇が広がるだけだった。
亮介は急いで家に帰り、布団を被ってそのまま眠りにつこうとしたが、頭の中には「呼び鈴の少女」や「旧校舎の鐘」の話がこびりついて離れなかった。
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次回予告:近づく恐怖
旧校舎の鐘を確かめるために向かう文芸部員たち。だが、そこには想像を超えた怪異が待ち構えていた――百物語を続けるほどに加速する「何か」の正体とは?
続きを進めながら、さらに深まる謎を解き明かしていきましょう!
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