第4話

「はい、嘘ー。隠してるつもりなのかもしれねぇけど、さっきから見えてるから。おばさんが言ってたのと同じ包みだし、たっかいチョコってそれだろ?」


 指差した先にあるのはチャック全開の鞄だった。柊吾がいない時に確認していたこともあって、綺麗にラッピングされた箱は丸見えで。


 う、嘘でしょ!? 私のバカ!

 しかもお母さんとそんな話をしていたなんて!


 机の上に置きっぱなしにしていた私が悪いけど、何で本人に言っちゃうかな。あげることも何故かバレてるし最悪すぎる。


 ここまできたら渡すべきだよね?

 でも、どうやって渡せばいいの?

 そもそも普通に渡すって何?


「フラペチーノ奢ってやったし、それ俺にちょーだい」


 固まっている私をよそに、柊吾が体をこっちに向けて右手を伸ばしてきた。


 今まで催促されたことがなかったから、頭が真っ白になる。心臓に悪いし予想外の行動はやめてほしい。


「は? 柚希ちゃんに貰ったものなら柊吾のお金じゃないじゃん」


 あぁ、口が勝手に動いちゃう。


「ちょーだい」


「お、お返しは倍以上のものでよろしくね! 食べたかったのにあげるんだから、これだけじゃ全然足りないからね!?」


 あげるというより、勢いよく押し付けた。


「げ、マジか。今年はお返しやらなくて済むと思ったのに。毎年探すの面倒なんだよな」


「嫌なら返してよっ」


 奪い返そうとしても高く掲げられて届かない。さっきから意地悪そうに笑ってるし、私の反応を楽しんでいる気がしてムカついてきた。


「やっと一個貰ったのに返すわけねぇだろ。それに、たっかいチョコ食ってみたかったし」


 その言葉に顔が緩みそうになる。

 そっか。誰からも貰わなかったんだ。

 でも、そんな顔は見せられないから必死に我慢した。


「ふん、じゃあ私に感謝してよね! 誰にも貰えないのは可哀想だから、しかたなくあげるだけなんだからね!」


「へいへい」


 渡せたのは良かったけど、今年も普通に渡すことが出来なかった。柊吾の前じゃ本心が言えなくなるし、何でいつもこうなっちゃうんだろう。


 ずっと今のままの関係ではいられないだろうし、このままじゃダメなことも分かってるのに。


 いい加減、素直になりたい。

 柊吾は私のことどう思ってる?

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素直になりたい 安東アオ @ando_ao

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