第2話

学校の生徒達を乗せたバスが高尾山に着く、空気の俺は一番最後にバスから降りた。


ビュー…、


何故か⁈俺に突風が吹き、前髪を掻き上げる。


山は嫌いだ。何かいる。高尾山の頂上から天に向かい真っ直ぐに伸びる光を幻視した。


しかし、たかだか一般の一生徒でしかない俺は、学校行事にとやかく言える勇気も覚悟を無く、成り行きに身を任せる事しか出来やしない。何事も無ければいい。


男女がペアになって、頂上を目指す、ぼっちの俺は誰も相手にしてもらえず担任の先生と最後尾、特に話す事も無く、黙々と登って行った。


途中、女子生徒が体調を崩して俺の隣の先生が介抱している。生徒達は一旦小休止して、暇を持て余している。


そんな時だった。「   」

ん?音がしない⁇

先程まであった虫の声や鳥の囀り、風の揺らす木々のざわめきがしなくなった。


周りの生徒達が動いていない。いや自分も動けない!金縛りか?


『常世』

「とこよ⁈」


『やはり聞こえるか、ズレ者』


何者かの声を聞くうち、帷(とばり)がかかった。今まで見えていた世界が薄くなり、暗く、透けて見える様だ。全く動かない学生達も存在が薄れていくが、逆に内面のオーラの様なモノが輝き出す。その輝きは学生からだけではなく、草木や風までも輝いている。


「…ズレ」


『お主だけ狭間に生きていた。苦しい訳よ、どこまでも見える目(まなこ)は、蓋をした常世まで写し、魂の形や万象の真理を顕にする。しかし分かる訳ではない。そんなモノお主には邪魔なだけだったじゃろう』


「…誰とも分かり合えない苦しみ、親でさえ他人、小石を積み上げるような無意味な時間、解放を望む感情と泥のような重たい体、とても窮屈だったし、苦行のようだった」


『そうか、そうだな、わしが少しいじってやるわ』


何処からか、いつの間にか現れた山伏が俺の真正面に立つ。天狗だと頭に閃く、物凄い風が全身に叩き付けられた気がした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る