第1話 出会い

「…い!おい!生きてんのか?」


「う、うーん?」


うぅ…足が冷たいよぉ…


「起きたか、水遊び中に寝ちまったのか?」


と目の前の青年が言った。


え…?この人地上人?なんだか言い方が意地悪だなぁ。


「水遊びじゃないですっ!着地に失敗しただけ!」


「それは災難なこった」


と馬鹿にしたように奴は笑う。


何なのこいつ!意地悪!


…海に落ちた私も私だけど。


「にしても、こんな夜にスカイダイビングする奴いねぇだろ」


「え?」


「は?」


すかい…だいびんぐ…?


「まさか、お前落ちてきたのか?」


「ええ、月から」


「はぁ!?」


驚く彼。まあ自分から地上に行く月の民なんていないらしいから。


「私、月の姫なの。迷惑なのは百も承知なんだけど、匿って頂けた「断る」なんでっ!」


最後まで聞かずに断らないっ!


「じゃあ聞くが姫サマをお匿いになることで俺に何のメリットが?」


「なら!蓬莱の玉の枝でも、仏の御石の鉢でも何でも探して差し上げます!だからお願いしますっ!」


「大げさだろ…いや、待てよ…」


すると彼は私を顎を持ち


「器量は悪くねぇな、よし

…俺の恋人になれよ」


「え?」


こ…コイビト…恋人!?


えぇー!?


「勘違いしてるみたいだから言うが、お前が思ってるもんじゃねぇ。あくまで恋人のフリだ」


「えっ!」


え?フリ?


「俺に歳の離れた兄がいるんだが、そいつがお見合いやら何やら煩わしくて仕方ない。

オニイサマを黙らすのにお前に協力してもらう…宝の献上より安いもんだろ?」


「た、確かに」


よかった…まだマシな方よね?


「で、オ姫サマの名前を聞こうか」


「私は萌黄、月では萌黄の君と呼ばれてたわ」


「俺は零。これから頼んだぜ?萌黄」


と笑う。


そして私は頷いた。


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