第三話 名誉ある死 12

「エミーリア、荷物をまとめておいて」

「え、どうして?」

 宿屋に戻ってからアランが言う。

「もし交渉が始まって、その立ち会いをしたら、すぐにその場から立ち去ろう」

「でも、それじゃあ」

 結果がわからない、と言いかける言葉にアランがかぶせる。

「私たちには関係がないことだ。いつでも出られるようにした方がいい。それとも、その成否を知る意味が君にあるのかい?」

「それは、ないけど」

「万が一ということもある、全面的に争うことになるなら、逃げ出せるようにしておいた方がいい。幸い次の街に行くくらいの食料はあるだろう」

「わかった」

 アランに言われて服をカバンに詰めていく。

 アランは窓から外を見る。

 銃声が一度鳴った。

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