第三話 名誉ある死 11

 魔術師に転送門を開けてもらって私たちは来た道を引き返す。

 門の先には銃を構えたチェンミィがいた。

「どうだった?」

 私たちしかいないことを確認してチェンミィが銃を下ろした。

「話に食い違いがあります」

「食い違い?」

「向こうは物資輸送の問題ではなく、水源の分配の問題だと言っています」

「水源?」

 ピンとこない顔でチェンミィは疑問を浮かべる。

「山から来た川の水について、あなたたちが法外な使用料を請求していると」

「ちょっと待ってくれ、水源? いやいや、それはおかしい」

「あなたたちが堰き止めていると」

「あそこに川なんてない。俺たちもあの山からは水を引いていない。あんたたちだって山から来たんだ、見なかったろ」

「それは……、はい、見ていません」

 少なくとも転送門から街へ下りてくるまでには川はなかった。

 チェンミィが首を捻る。

「いや、昔、祖父から聞いたことがある。あの山に川が流れていたという話だ。それだって祖父が小さい頃の話だ」

「どれくらい前ですか?」

「わからんが、転送門ができる前の話だと思うが。もう枯れているはずだ」

 アランが割り込む。

「つまり、向こうはありもしない川を堰き止められたから攻撃をしている、と」

「それで、報復に物資を止めている、と」

 私が付け足す。

「それじゃあ、争う理由なんてどこにもないじゃない!」

「いや、しかし、物資を止められているのは事実だ。川の事実を知れば、向こうが圧倒的に優位にならないか?」

 チェンミィはなんだか拍子抜けをしたような顔のままでなんとか理由をつけようとしているみたいだった。

「たいした量ではないと言っています。交渉の余地はあると思います」

「あんたもそう思うか?」

 チェンミィはアランに視線を向ける。

「繰り返すが、私たちには決める権利はない」

「ちょっとアラン」

「だが、誤解を解くつもりなら今しかないかもしれない」

「……そうだな、戻って方針を決める」

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