第三話 名誉ある死 8

「さて、やるべき事は終わったが」

 街を一周して、チェンミィが結界を張り終えると、私たちはまた塔の内部まで来た。日が落ちかけて、外は夕焼けになっている。

「転送門は案内できないが、あっちの街を迂回する経路なら教えよう。夜に移動することはお勧めしない、宿があるからそこに泊まって明日出発すればいい」

「わかった、そうしよう、エミーリア」

 アランが私を見る。

「あの」

私が歩きながら考えていたことを話す。

「やっぱり、話し合いは、できませんか?」

「なんだって?」

「向こうの街と、です」

「お嬢ちゃん、あんたは何を聞いていたんだ」

 呆れた顔で溜め息をつきながらチェンミィが言う。

「私たちが窓口になります」

「私たち? エミーリア、君は……」

 次に呆れた顔をしたのはアランだった。

「私たちが関わることではない。私たちは責任を取れない」

「チェンミィさんが襲われたのは私の責任です。それに、お互いに攻撃をしあうのは間違っていると思います」

「なにを」

 チェンミィはもはや怒る気さえしていないようだった。チェンミィの考えもわかる、

「チェンミィさんは、向こうの魔術師と話をしたことはありますか?」

 チェンミィは首を横に振る。

「いや、ない。向こうも代々の魔術師のはずだが」

「そうですか、じゃあ、交渉のテーブルについたことも?」

「ない」

「試してみませんか? 私たちがまず行って、話をしてみます」

「そんなことでどうにかなるわけがないぞ」

「試すだけです。それでもいけませんか?」

 チェンミィは長く息を吐く。

「……わかったよ、好きにしてくれ」

「ありがとうございます。それでは、明日、私たちは転送門で向こうの街に行きます。それで話し合いができそうであればそれを伝えます」

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