第三話 名誉ある死 9

「私は君の行動をできれば尊重したい」

 宿屋について、腰をベッドに下ろして静かな声でアランが言った。治療魔術のせいで疲れているのかもしれない。

「だけど、今回は無謀すぎるし、私たちにとって利益がない。責任もない。彼らは望んで戦っている」

「それは、誤解かもしれない。それに」

「なに?」

 立ったままの私がアランに近づく。

「あんな言われ方をされたままでいいの? 国家魔術師が役に立たないなんて」

「エミーリア、君はそれを気にしていたのか。別に今さらどうこう言われてもなんとも思わないよ。チェンミィがそう言うのも尤もだ。この手の話は百年前でもされてきたし、私の籍がまだあるとも思わないしね。私は『元』に過ぎない。これを機会に服装も変えたっていいよ」

「私が、よくない」

「どうして?」

「師匠が貶されて、黙っている弟子はいない」

「は、はは」

「それに今は夫が貶されたのも同じ、それに怒らないなら、私はあなたの妻じゃない」

「わかったよ、明日、一度だけ試す。それで没交渉なら素直に引き下がる。それでいいね? 私たちは私たちの安全を優先する」

「ありがとう、アラン」

 アランが手で私を呼ぶ。

 私がアランの手に触れると、勢いよくアランは私を引っ張った。そのままアランに抱きしめられたままベッドに倒れ込む。

「君に何かあったら、私も死ぬということを忘れないように」

「うん」

「わかったならよし、魔力補充のためこのまま少し眠りたい」

 そう言い切るかどうかで、アランは寝息を立てていた。

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