第三話 名誉ある死 6

 持ってきてもらったお湯でチェンミィの傷口を拭き、包帯を巻いた。その残り湯で手を洗って、アランと一緒に椅子に腰を下ろす。魔力の消耗が激しいアランの手を握って少しでも補充できるようにする。

 しばらくしてチェンミィが起き上がった。彼は頭を振っている。それから腹部に手を当てる。

「助かった」

「よかった」

 私の声に、チェンミィが睨んだ、ようにも見えた。

「あんたたちのせいだ。張り直すタイミングを狙っていたんだ」

「それは、ごめんなさい」

 チェンミィがベッドに座りながら背を壁にして私たちの方を向く。

「まあいいさ、いつもこんなものだ。今日はちょっとばかり運が悪かっただけだ。相手だって無傷じゃない。すぐに攻め込んでこないのがいい証拠だ」

 一発はチェンミィに当たったとして、他の発砲音はこちら側から撃ったものだったのだろうか。

 チェンミィが髪は掻き上げる。隠れていた右目は閉じられたままだった。おそらく負傷をして見えなくなったのだろう。

「しかし、状況が悪くなった。相手もしばらくは警戒するだろう。あんたたちも転送門は使えそうにないな。くぐった途端に撃たれるぞ」

「あなたはどうするの?」

「結界を張り直しに行く。最優先事項だ」

「まだ傷が」

「傷があろうが痛かろうが、この街を守ること以上に優先されるべきことなんかない」

 チェンミィが立ち上がった。

「今度はあんたたちにも協力をしてもらう。責任分は働いてもらう」

「なにをすれば?」

「護衛だ。それでいい」

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