第三話 名誉ある死 3

「二人とも魔術師だな」

「ああ」

 男は杖ではなく銃を持っていた。体格は大きく小さくもない、アランと同年代か少し上のようにも見える。右目が髪で隠れていた。

「なぜ結界を破壊した?」

「それは、申し訳ない。ちょっとした行き違いだ」

 アランが私の代わりに謝る。

「余計なことをしてくれたな。街に対する敵対行為だということくらいはわかっているだろうな」

 圧力を感じる言い方だ。男が立ち上がる。

「チェンミィだ」

 男が名乗った。

「私はアラン、彼女はエミーリアだ」

「どうしてこの街に来た」

「立ち寄っただけだ。あなたが嫌がるなら、すぐにでも出て行く。転送門の場所だけ教えてくれればいい」

「そうか」

 チェンミィが返す。

「あっちの街に雇われたわけではなさそうだな」

「あっちの?」

 チェンミィが窓の外を銃で指した。

「違います」

 私が答えた。

「だろうな」

「どうしてそう思うんですか?」

「この街に一番近い転送門は向こうの街のそばに繋がっている。そこの転送門は監視しているし、そこから来ていないのは確認している。だからお前達は歩いてきたか、別な転送門から来たかだ」

「ケーリュのいた街の転送門から来た」

 ケーリュの名前を聞いて、チェンミィが頷いた。

「……ああ、なるほどな、あいつの名前を知っているってことはわかった。だが全部を信じたわけじゃない。俺が結界を張り直すまでここにいてもらう。下には下りるな、さっきの二人が見張っている。それからのことはまた後で話す。手荒な真似はしたくない」

「わかった」

「椅子はないがそれくらい我慢してくれ」

 そう言い、チェンミィは下りていった。

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