第一話 途中の始まり 6

 二人で夕食を取り、ようやくゆっくりとする時間ができた。

 向かい合って座っている。

「あの、魔術は」

 沈黙に耐えられなくなってアランに聞く。

「そうだな、まずは君がどの程度自分を理解しているのかだ。自分の魔力を感じることはできる?」

「ええっと、『ある』というのはなんとなくわかります。ぽかぽかしたみたいな。それが身体の隅々にあります。その『ある』というのを証明する方法はないですけど」

「ぽかぽか、ね」

「変ですか?」

「いや、人それぞれだよ。温かいという人もいるし、冷たいという人もいる。トゲトゲしている人もいれば、丸いという人もいる。それもどう認識するか、だ。自分の中身をきちんと見つめるかどうか」

「あの」

「アランでいいよ」

「でも年上ですよね?」

 私からはアランは私より十歳ほどは離れているように見える。

「師匠と弟子なら呼び捨ては困るが、夫婦なのだから年は関係ないと思うが」

「なっ、あの、まだ夫婦とかそういうのは……」

「まあアランでいい」

「わかりました、アラン」

「ついでに丁寧な口調もしなくていいし、思ったことを言葉にしていい。これからは二人の信頼関係が鍵になる」

 アランに言われて、一度大きく胸で呼吸をして、覚悟を決める。

「わかった。アランは魔力をどう感じているの?」

「強いていえば、渦かな。螺旋を描いて中心に向かっていく渦だ」

「そう」

「エミーリアは、他人の魔力を感知することは?」

 アランをじっと見る。

 首を横に振った。

「わからない」

「魔素は?」

 また首を振る。

「わからない」

「そう、目の問題か、皮膚の問題か、接続できないというのは認識できていないということか」

 アランは一人で納得しているようだった。

「では、レッスン開始としよう」

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