第13話

「先輩、ちょっと聴いて良いですか」


「ん?なに、どうした」


「アレってやっぱ幽霊ですよね、だったらお祓いとかしないとヤバイですかね」


「お祓い?あぁ、どうかな」


「祟られて熱出たとかよく聴くし、あれマジでヤバイですよ、今でもまだ怖いですよ」


「お祓いねぇ、ちょっと聴いてみるか」


 取り敢えず田島に連絡を入れる事にした、まだ朝の六時だが田島の朝は早い、大丈夫だろう。


 田島は正雄の話を何も言わず最後まで聴いてくれた。


「ん~、目が銀色って言うのは良くないね」


「そうなんですか」


「金とか銀って言うのはねぇ、あんまり良くないのだよ、私の手に負えそうにないねぇ」


 田島にしては弱気な発言だった。


 それほどアレはやばかったのだ。


 中坊の癖に生意気な奴だ、そう思っても怖いのだが。


 田島は霊媒の先生を紹介してくれると言う。


 霊障や霊媒を生業にしている人間が居る事は知って居たが、会うのは初めてだ。


 手に負えないからと田島が紹介するのだ、田島以上と言う事だ。


 橘姫たちばなひめと人々から敬称を受けている人らしい。


 場所も車なので行けない距離ではない。


 予め田島の方から連絡を入れてくれるとの事だ、正確な住所を聴いて電話を切った。


「おう、霊媒師の先生を紹介してもらった」


「お~、それは頼もしいですね」


「ここから三十分くらいのドライヴになるけど、どうする、行ってみるか」


「も、勿論です、すぐ行きましょう」


 正雄はもう一度猫峠に行き確認したかったのだが、その気持ちも段々と薄れて来ていた。


 それよりも橘姫の方に興味が湧いて来た。


 橘姫は婆さんだった。


 姫でも何でもない。


「アンタ呼ばれよるね、銀色の目に」


 開口一番、正雄を観て橘姫はそう言った。


「アンタ分らんやったの?呼ばれとること、行ったら帰って来られないよ」


 橘姫の言う通りだ、相手が霊だと分っていたはずなのに、どうしても行かなくてはならないと思って居たのだ。


 行く理由も冷静になって考えたら、おかしい事を言っていた。


「アンタ魅入られとったんやねぇ、行っていたら今頃どうなっていたか分らんよ」


「はい、背中がゾッとしますわ」


「まぁ、そこのお兄ちゃんの後ろが助けてくれたんよ、よくお礼を言いなさいよ」


「え?ん?う、後ろ?」


「アンタ観えるのやろ?そこのお兄ちゃんの守護霊に助けられたのやからね」


「後輩の守護霊にですか?」


「そうよ、そこのお兄ちゃんの守護霊はスゴイねぇ、眩し過ぎて姫ちゃんハッキリと観えないわ、それだけ霊格が高いって事。 じゃないと今頃みんな連れて逝かれとったわ、アンタの守護霊は何をしよったのかいなあ」


 この婆さん自分の事を姫ちゃんて言った。


 その事が気になって後の話が余り入って来ないのだが、結局はこうだ。


 あの中坊よりも後輩の守護霊の方が強かったって事だ。


 あの時俺が戻ると言う事は、皆戻る事になっていたはずだ、運転していたのは俺だからだ。


 婆さんの言う通り本当にやばかったのかも知れない、後輩の方を良く見ると、何んとなく後光が射している様に明るく見えた。


「アンタらな、今回だけは祓ってやるわ、まだ少し縁付いて居るから。でもアンタら面白半分で危険な場所に行っとるのやけな、ホンマなら姫ちゃん放っておくんやで、分かっとんのかいな」


 少し縁付いて居るとは、中坊にまた呼ばれる可能性があると言う事だろう。


 そんな事よりまた姫ちゃんて言った。


 キモイから良い婆さんの癖に…しかし、力は本物だ。


 しっかりと祓って貰おう。


 心霊スポットは遊び半分では絶対に行くべきでは無い。

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