第11話
正雄は瞑想を始めることにした、とは言うものの瞑想って何だろう。
取りあえずスマホでググるところから始める事にしよう。
瞑想とは心を鎮めて自身と向き合い、今の自身の心がどう感じているか知る事らしい。
瞑想を行う事により、深く自分を見つめ直す事が出来、頭の中を駆け巡る雑念や日常のストレスがあることに気がつくとある、なるほどね、まず頭の中から雑念を振り払うのが大事なポイントになる訳だな。
よしやってみよう。
中々頭の中を空っぽにするのって難しい、ついつい要らない事を考えてしまう。
寺のお坊さん何かも、きっとこんな修行を行っているのだろう、座禅を組んでした方が
良いのだろうか?
取敢えずは持続しないと意味がないだろうから、リラックスして楽な体制でやる事にした。
何日か続けてみると、いかに瞑想が大事かと言う事が分って来た。
気分が落ち着き、集中力が上がって来た様な気がする。
始めの頃は苦しんだが、頭の中を空っぽにした状態で今の自分自身を見つめていると、不思議だが何かが見えて来た様な気がしたのだ。
何かは分らないが、それはとても大事なものの様な気がする。
この何かがきっと除霊する上で必要なものに成るのだろう。
今すぐに分らないでも、焦る事はない、少しずつ分って行けば良いのだ。
瞑想は夜寝る前と、朝起きてからすぐの五分ずつ毎日やる事にした。
一ヵ月程続けてみると身体の調子が本当に良くなった。
ストレスの逃がし方を覚えたからだ。
このひと月の間に二度程、田島に付いて滝修行を行った。
しかし滝に打たれながら頭を空っぽにする事は出来なかった。
あのうるさい音と大量の冷たい水しぶきの中では、とてもじゃないが心を落ち着かせる事は出来そうにない。
その内出来る様になると田島は言うが、まだまだ先は長そうだ。
このアパートに来て四ヵ月が経とうとして居た。
早いものだ、霊魂は毎日のように眼にしているので、もう慣れてしまった。
人間どんな環境でも慣れるのだなと感心してしまう。
一度現れた霊に、死んだらどうなるのかと聴いてみた事があるが、これは愚問であった。
自分が死んで居るとは思って居ない連中である、何言っているのコイツみたいに不思議そうな顔をされた。
それが分って居たならとっくに成仏している筈だ。 ある日変なものを見た。
アパート内のエアコンと天井の隙間に丁度顔の様なモノが挟まって居るのだ。
フワフワしてまるで風船のようである。
窓を開けようとした時に発見したのだ。
空気が淀んで居る気がして、空気の入れ替えをしようと思い窓を開けた。
その顔の様なモノは暫く風に揺れていたが、ピュ~ッと風に吹かれて飛んで行ってしまった。
後で田島さんに聴いたのだが、暗い場所や淀んだ空気の溜る所には“オリ”が溜るらしいのだ。
その“オリ”とはワインの中に溜る浮遊物や沈殿物の事をそう呼ぶが、田島の言う“オリ”は、何か悪い気の様なモノらしく、ワインの中に溜る浮遊物を想像したら分りやすい。
窓を開けて風を入れ替えるだけで、何か気持ちがスッキリするのは、実はそう言う事だったのか。
あの風船顔がオリね、確かに何か悪い気の様なモノだったと思い返すと、可笑しくなり笑ってしまった。
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