第7話
田島さんの家は校外にあった。
古い一軒家で、幽霊が住み着いて居ても、おかしくない感じだ。
しかし田島さんの話によると、風水的には最高の立地らしく。 この家に霊魂が寄って来たコトは、一度も無いのだと。
見える人が言うのだから本当だろう。
田島さんは小学生の頃、大きな病気をしたのだと。
その時に生死の境を彷徨い続けたのだが、奇跡的に助かったのだ。
そして、その日から霊魂が見える様になったのだと話してくれた。
と言うコトは、四〇年近くも見て来たのだ。
正雄の様なにわか霊感とは全然比べ物にならない程の大ベテランだ。
取りあえず正雄は引越ししてからの一連の出来事を全て順序立て、田島さんに話して利かせたのだ。
田島さんは正雄が全て話し終えるまで一言も口を挟まなかった。
そしてしばらく黙ったままで何かを考えている様だった。
「吉永君はその部屋に入った事で目覚めてしまったのだね。 しかしそれは良くある事なのだよ。 何処か特別な場所に行く事や体験する事で、元々備わっているモノが開花する。 私の場合は大きな病気がそれだよ。 吉永君の気持ちは良く分かるよ、私も始めは自分の頭がおかしくなったのかと思ってね…大変だったよ、人に見えないモノが見えるのだもん。 慣れるまでは時間が掛ったよ。 吉永君は随分早いのだね、慣れるのが。 きっと素質があるのだろうね。 その力は磨かないとダメだよ、今のままじゃ見えるだけで逆に呼び寄せてしまうだけだから。 最低でも呼んじゃったモノ位は払えるようにならないとね、辛いよ」
田島さんの言う通り、呼び寄せたモノ位は払えるようになりたい。
力を磨くとは、修行を行うのだと言う。
修行とは、悟りを目指して心身浄化を習い修める事らしく、滝に打たれたり、瞑想してみたりするのだと言う。
田島さんは毎月必ず滝に打たれに行っているらしい。
正雄は今度行く時には一緒に連れて行って貰う約束を執り付けた。
今度時間がある時にでも瞑想を行って見る事にしよう、これなら独でも出来そうだ。
田島さんは除霊もすると言う。
口で諭すのではなく心に直接語り掛けるのだそうだ。
心に語ると余計な言葉は要らず、気持ちをダイレクトに伝える事が出来て、相手も理解しやすくなるのだそうだ。
田島さん曰く、この力は誰もが持てるモノではない、それなのに自分たちは持っている、これにはきっと何か意味があるのだと言う。
何か特別な意味が。
だからこの力は自分だけの為に使ってはならない、金儲けに使うなどもっての他なのだと。
正雄は今日田島さんの家に行って良かったと思った。
心の何処かで、もしかしたら自分は頭がおかしくなっているのではないかと思って居たのだ。
頭はおかしくない、力の意味も分かった、これから向かう方向性もおぼろげながら見えて来た。
何よりも嬉しかったのは、自分が特別な存在なのだと言われたコトだ。
そんなコト今まで誰からも言われたコトが無かったので、嬉しいより驚きの方が先に来た。
しかし自分のような人間が本当に特別なのだろうか?自分なんかで良いのだろうか。
考えていると少し不安になって来た。
いつも考え過ぎて、最後には不安になるのが正雄の悪い癖だ。
今日、田島さんが言って居たのだが、正雄の部屋は霊の通り道になっているのではないかとのコトだ。
頻繁に違う霊魂が現れる場合は要注意らしいのだ。
霊の通り道とはその名の通り、頻繁に霊魂が通り抜けて行くスポットのコトで、あちらの世界とこちらの世界とが、交じり合う異空間的な場所になっているのではないかと言う訳だ。
もそもそうであるなら、正雄がその場所で生活するのは余り宜しくないと注意されたのだ。
特に正雄は見える人だから、頻繁に霊魂が現れるのであれば、何か障りがあるかも知れないと、心配してくれた。
今度の日曜日には確認しに来てくれるらしいのだが、しかし田島さんの言う霊の通り道であったとしても、今の正雄に引っ越しなどとても無理だ。
「まぁなるようになるさ」
正雄は独り呟くと、帰路を急いだ。
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