第3話 朝日と海と山

出産三日目から少しずつ歩けるようになり、

母子同室となった。授乳やもく浴などの講習と子の世話、検査の合間に食事と服の洗濯、シャワー室を予約して入る。もはや強化合宿のごとく、同時期に出産したお母さん達と夜中の授乳室で「眠いですね…」と励まし合いながら過ごした。少しでも母乳を出そうと、娘が寝ている間に搾乳していると、助産師さんが様子を見に来てくれた。

「眠れてますか?休むのも育児のうちですよ」と優しく言ってくれた。

「ありがとうございます、そろそろ寝ます」

張りつめていた気持ちがほぐれた。


退院日の明け方、窓から外をそっと眺めると、コンビナートと伊勢湾、遠くに山並みが見えた。いつも見慣れた景色が朝焼けで美しかった。

この土地や人に支えられて自分がいたのだと、身をもって実感した。母もこんなふうに私を産んでくれたのだろうか。汗だくで手術に臨んでくれた先生と助産師さん、励ましてくれた家族や友人、両親へ改めて感謝の気持ちを伝えたい。

そして娘が大きくなってから、産まれた日のことを話そう。


三年後の娘の誕生日の朝、娘に服を着せようとすると、

「もう赤ちゃんじゃないんだけどなあ~」と言われた。産まれたあの日のことを思い出しながら、娘の着替えを眺めていたのだった。

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誕生日 小酒井ナミ @orangesummer723na

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