第6話 成功報酬300万!

 宗仁むねとさんの後を付いて行くと、先ほどの応接室よりも狭い部屋に案内された。ここも応接室みたいだな。応接室(小)ってとこか。さっきの部屋より小さめのテーブルやソファーが置いてある。もちろん全部高級そうなやつ。少人数で密談する用の部屋って感じだ。


「改めて確認したい。君がロリコンと言うのは間違いないのだね?」


「は、はい。間違いありません」


 真剣な表情の宗仁さん。こうなりゃ何が何でもロリコンキャラを通してやる。


「そうか……君もたいへんだな」

『厄介な性癖』『可哀そうに』『苦労しているな』


 腕を組みながら目を閉じる宗仁さん。なんか同情されてるけど、そんな深刻に受け止めなくてもいいですよ?その場しのぎの嘘なので。


「これはここだけの話にしてくれ。実は由依には婚約者がいるのだ。まだ正式なものではないから公にはしていないが、家の者は皆知っている」


「は、はあ……」


 高校生で既に婚約者かぁ、やっぱり俺なんかとは住む世界が違うね。でもなんでこんな話を俺にするのですかね?


「その婚約者というのは遠縁の息子さんでな、由依とも小さい頃から交流がある。いわゆる幼馴染というやつだな。今はアメリカのハーバード大学に通っている」

『任せられる』『信用』『彼なら』


「へ、へえ、凄いですね」


 ホントになんで俺に話すの?


「とても優秀な好青年なのだ。由依も「恭兄ちゃん」と呼んで慕っているので結婚には問題はないだろう。向こうも由依のことを大切に思ってくれているようだしな。もちろん私と妻も彼を気に入っている。由依が高校を卒業すると同時に正式な婚約を交わす予定なのだ」

『後継者』『婿に』


「それはおめでとうございます」


「だがここで一つ問題があってな、実は由依が彼氏を作りたがっているようなのだ」


「……ん?あれ?婚約者がいるのに?」


 なんかおかしな話になってきたぞ?


「これは推測なのだが、青春時代の淡い恋心というやつに憧れているのではないかと思っている」


「淡い恋心?」


「由依は最近、鈴音君の影響で恋愛小説をよく読んでいるからな、登場人物達のような恋愛がしたいと思っても不思議じゃない」


「それなら婚約者と恋愛すれば良いのでは?」


「まあそうなのだが、婚約者と彼氏は別物らしいのだ。本人に直接聞いたわけではないので推測でしかないが……」


「本人に直接聞かないのですか?」


「聞けんよ。娘も年頃だし、娘の恋愛事情など下手に聞こうとして嫌われたくないしな」

『聞くの怖いし』『照れるし』


 照れるって、そこは普通の父親と同じなのか。


「こういうことは妻に任せたいところだが、娘の恋愛にまで口は出さないと言われてしまってな」


 なんだか大企業の社長さまも色々と悩みはあるもんなんだな。


「そこで君に頼みがある。娘の側にいて、娘に彼氏ができるのを阻止してほしい」


「え!?僕がですか?」


「そうだ。ロリコンの君なら娘に変な気を起こさないだろうからな。それに父親の私が言うのもなんだが娘は凄く可愛いだろう?言い寄って来る男なぞ、それこそ掃いて捨てるほど湧きだしてくるのだ」

『ウジ虫どもめ』『片っ端から潰す』


「な、なるほど……」


「しかも鈴音君はこの件に関してはアテにならん。どうも由依に変な同情をしているようで、むしろ彼氏作りに協力的なのだ」


 同性だから共感できるって感じなのかな?


「私はね藤野君、清純なまま由依を嫁がせたいと思っているのだ。婚約者とは別に彼氏がいました、では結婚相手も嫌だろう?それにな、一点の穢れもない由依と結婚式でバージンロードを歩くのは私の夢でもあるのだ」


「はあ……」


 このオッサン、けっこうこじらせてね?


「まあ高校生の君に父親の気持ちなどわからんだろうがな。とにかく私がそう思っていることだけは知っておいてくれ。どうだろう、私の頼みを聞いてはくれないか?もちろん謝礼は払う。そうだな……1日3千円、登校日だけで良いので20日で月に6万くらいにはなるか。勤務時間は由依が学校にいる間だけ。期間は由依が高校を卒業するまで」


「ろ、6万円!?そんなにですか?」


 月6万もあればバイトをかなり減らせる。正直言うと体力的にかなり厳しかったんだよね、バイトで疲れてるのに帰ってから更に勉強するのは。睡眠時間も削らなきゃいけないし。


「この話はなるべく由依には悟られないようにしてくれ。私が頼んだなんて知られたら由依に嫌われてしまうかもしれんからな。今日は不在の妻にも内緒だ。それとそうだな……高校を卒業して正式に婚約が成立するまで彼氏作りを阻止してくれたら300万円の特別ボーナスも出そうじゃないか」


「さ、300万円!!本当ですか?」


 それだけあれば妹の凪を国立大の医学部へ進学せることができる。凪は医者になりたいんだよ。前に調べたら、国立なら入学金がだいたい30万で授業料が年50万ほど。大学が遠くて一人暮らしとかになったら更にお金がかかると思うが、俺も高校卒業したら働くし、300万円あればなんとかなる!


「ああ、男に二言はない。ただし、娘に彼氏が出来てしまった場合、300万は無しだ」


「わかりました!その依頼、お受けします!娘さんの純潔はこの藤野が守ってみせます!ご安心ください!」


 俺は立ち上がり胸を張って堂々と宣言する。なんせ月に6万も貰えて更に成功報酬300万だ。こんな美味しい話、断るわけがない!


「そうか!受けてくれるか!これで安心だ、よろしく頼むぞ!」


 宗仁さんも立ち上がって俺の手を取った。俺たちはガッチリと握手を交わし、互いにとてもいい笑顔を浮かべた。

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