第3話 友達からどうですか?

「クソ! クソ!! 」


 バスケ部の練習終了後の18時30分。


 俺はストレスをぶつけるようにバスケゴールにシュートを放ち続ける。


 俺の放ったシュートは全てゴールのネットに触れずにスウィッシュする。


 怒りの矛先は自身を騙した岡崎達とそんな彼らの嘘をあっさり信じた自身に向いている。


「クソ!! どうして俺は!! 」


 俺はゴールに吸い込まれたボールを自身の足で苛立ちながら取りに行く。


「あ! いたいた!! 若松君!! 」


 聞き覚えのある声が俺の耳に届く。自然とドリブルを突こうとした手が止まる。


 声のした方向に視線を向けると、そこには中川さんの姿があった。


 俺の告白をあっさりと断った同じクラスのマドンナ的存在。そんな中川さんが告白の時と同じ紺色のブレザーとスカート姿で俺の目の前に佇む。


「っ!? 」


 中川さんの姿を認識した俺は告白の失敗の記憶を思い出し、強力な羞恥心に襲われ、体育館から退出しようと試みる。


「あ! ちょっと待って!! 伝えたいことがあるから!! 」


 中川さんは駆け足で逃げる俺に必死な声で呼び止める。


「…伝えたいこと」


 俺は中川さんの意味深な言葉に反応し、足を止める。既に体育館の出口の目の前に到着していた。


「はぁはぁ。若松君足速いね。あっという間にここまで移動しちゃうんだから」


 中川さんは俺を追い掛けるように駆け足で体育館の出口まで移動する。


「呼び止めてごめんね。でもこれだけは伝えたくて」


 中川さんは多少なりとも荒れた息を整えるように軽く深呼吸をする。


「これだけは伝えたい? 」


 俺は再度の中川さんの意味深な言葉に眉をひそめる。


「うん。そんなの。だから聞いてくれないかな? 」


 中川さんで上目遣いで不安そうに俺を見つめる。


 そんな表情に俺の心はノックアウトする。


 可愛すぎる~〜。


「う、うん。いいよ」


 俺は動揺を隠すように顔を背け、素っ気なく了承する。


「よかった~」


 中川さんは心の底から安心したような表情を浮かべる。ウソ偽りなどが皆無の表情であった。


「それで伝えたいことは? 」


 俺は早く話を切り上げ、この状況からエスケープしたいため、敢えて中川さんを催促する。そうしなければ精神的に辛いものがあった。


「あ、ごめんね。あのね告白を断った身としておかしいかもしれないけど。いきなり彼氏と彼女の関係ではなく、友達から始めてみない? 」

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