第2話


 東京支部の総務局からは、基本的に“禁止“って通達されてる。


 何がって、「学校」に行くことが。


 私たちの間では当たり前の話で、国際的に指名手配されてる犯罪者なんだから、公共の場で生活すること自体危険なんだ。


 正体がバレたら即刑務所行きだし、仲間まで危険に晒すことになる。


 安全に暮らすには人々の目を避けなければならず、表立って生活すること、社会の中で生きていくことは、一種のタブー扱いとなっていた。


 それでも、ひと昔前に比べればだいぶマシになっていた。


 スキルメーカーと呼ばれる特殊能力たちが生まれた頃は、人権なんてあったもんじゃなく、見つけ次第即武力行使をされ、銃を突きつけられていたらしい。


 時代が進むにつれて情報が整備され、私たちの存在が少しずつ理解されるようになってきていた。


 特殊能力を持っているといえど、同じ「人間」で、同じ「人権」を持っている。


 そういう声も少しずつ増えてきていた。


 とくに、この日本では。



 ただ、危険な存在で、国際的に危険視されている“テロリスト”であるという情報自体が、まだ社会の土壌に根付いている状況だった。


 だから見つかったらタダじゃ済まないし、問答無用で刑務所送りになる。


 スキルメーカーたちの「能力」は、それほど危険視されていた。


 世の中には優しい人もいるけど、まだまだ全然って感じ。


 だって、「モンスター」だよ?


 私たちを取り締まる国際機関が、ヨーロッパ連合(EU)を中心として立ち上げれてるんだけど、その名称はWMDM。


 日本語に訳すと、“世界魔物討伐機構”(World Monster Defeat Mechanism)っていう。


 ひどくない?


 同じ人間だとか人権があるとか、そういう声が霞んじゃうっていうか、バケモノにしか見られていないっていうか。

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