EP1 - 日常なんて

第1話



 ピピッ



 『そっちはどう?水樹』


 『どうもこうも、退屈だよ』


 『今日バトルアリーナで練習があるんだけど、来る?』


 『行ってもいいけど、今日デートだし』


 『デートぉ!?誰と??』


 『彼氏と』



 最近、彼氏ができた。


 ポケットワークスと呼ばれる通信機器で、友達とメッセージのやり取りをしていた。


 藍浦エイザ。


 彼女は【-23andMe-東京支部】所属のメンバーの1人で、「炎熱系統(フレイヤ)」の能力を持つスキルメーカーの1人。


 品川区に拠点があるスキルメーカーたちのチーム、「ブレイズエッジ」のメンバーで、私とは同じ班に所属している。


 ま、ようは“同郷の仲”ってやつ。


 バトルアリーナで練習なんて、暑苦しいから嫌なんだよね。


 どうせ基礎練とか地味なことばっかでしょ?


 だったら普通に彼氏と遊ぶよ。


 エイザにそう言うと、彼女は怒鳴ったように「聞いてない」と言ってきた。

 


 『彼氏って、いつできたの?!』


 『最近』


 『おいおい、大丈夫かよ…』


 『別に普通じゃない?他のチームの子だって、もう一年くらい経つって言うし』


 『あのな、バレたらお前だけの責任じゃなくなるんだぞ?』


 『責任責任って、そんなの気にしてたら普通に生活できないよ』


 『その“普通”にアタシたちは属してないんだよ。わかる??』


 『はいはい』



 エイザの言いたいことはわかってる。


 そもそも私たちは人類の「敵」だ。


 世界政府に追われてる国際的な犯罪者であり、存在自体が「違法」な存在。


 癪な話だけど、私たちが安心して暮らせる「場所」なんてないんだ。


 それはわかってた。

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