KICK BACK -約束の地、水平線の向こうまで-

平木明日香

デザイナーベビー



世界魔物討伐機構、WMDM(World Monster Defeat Mechanism)。


「スキルメーカー」と呼ばれる特殊能力者たちが、Xデーと呼ばれる日を境に世界に溢れ始めていた。


WMDMによれば、現在全世界でスキルメーカーの数は数千から数万に及ぶと推定されている。


全ての始まりは、「ゲノム編集」と呼ばれる遺伝子操作技術が発足した1980年代の初頭に、最初の世代(ファーストステージ・チルドレン)と呼ばれる「デザイナーベビー」が誕生したことだ。


デザイナー・ベビーの最初の子供の名前は、“リリア”と名付けられた。


彼女は国際的な政府機関によって、長い間ゲノム編集研究の「被験者」となり、遺伝子選択の危険性や健康面での問題、将来的な懸念材料を提供するべく、『23andMeプロジェクト』と呼ばれる個体ゲノム解析、およびバイオテクノロジーの実験対象になってきた。


デザイナー・ベビーたちの遺伝子操作は、リリアをはじめとして数多く行われた。


彼らは将来的な人類の進化に役立たせるための資料を作成するべく、その生涯を全うしてきた。


研究所という“檻”の中で、何十年もの間。



時代は移り変わり、2040年。


デザイナー・ベビーたちが提供した遺伝子操作技術が、国際的な評価基準の下に認められようとしていた頃だった。


次の世代(セカンドステージ・チルドレン)と呼ばれるデザイナー・ベビーの中から、「DS細胞」と呼ばれる予期していない遺伝子変異に目覚める子供たちがいた。


この子供たちは、科学的な常識を超えた運動能力や超能力を扱え、研究に携わっていた科学者たちや関係者たちを驚かせた。


そして、その存在を恐れた政府は、子どもたちを排除しようと試みる。


約2000人のデザイナーベビーたちを収容・管理していた「センター・ハウス」。


この研究所を封鎖し、秘密裏に抹消しようとしていたのだ。


遺伝子操作という「研究」そのものを。


「歴史」を。



しかし、自らを守るべく立ち上がったデザイナーベビーたちは、政府によって投入された戦闘部隊を退け、破壊された研究所を後にする。


この事件は、“太平洋前線”と名付けられた。


デザイナーベビーたちは自らを「スキルメーカー」と名乗り、世界で暗躍し始める。


全ては、生きるため。


自らの運命を、自らの足で決めるために。


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