第3話
“普通に生きる”ってどういうことか、ずっと考えてきた。
研究所の中で生まれて、あてもなく外に飛び出した。
何が正しいのかなんて二の次だった。
生きることに必死で、ただ、逃げることで精一杯だった。
いつも、窓の外を見てた。
理由なんてなかったんだ。
島の外に出て、海の向こうに行く。
そう思うことが、どこから来たものかさえわからなかった。
『とにかく気をつけろ?最近取り締まりも厳しくなってるって噂だぞ?』
『エイザも経験してみれば?席は用意しとくし』
『学校なんか行かねーよ。行ったってどうせ役に立たねーんだ』
『身内ばっかのとこにいたら、それこそ息が詰まっちゃうよ?』
『水樹と違って人見知りなの。孤立したらどうすんだよ』
『どの口が言ってんだか…』
私が学校に行ってるのは、エイザしか知らない。
2人だけの秘密なんだよね。
バレたら怒られるだけじゃ済まないってのと、せっかく今まで積み上げてきたものが、全部台無しになっちゃうって可能性があるから。
ここまで大変だったんだ。
友達を作るのも。
学校に忍び込むのも。
スキルメーカーたちに、「身分」は存在しない。
住民票の登録だってしてないし、保険証だって無い。
社会の中では幽霊のような存在で、スマホの契約だってろくにできないんだ。
身分を証明するものが、何もないから。
じゃあどうやって学校に忍び込んだのって?
…まあ、それにはちょっとしたコツがあって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます