第14話 赤くなる傘

 突然の大雨とはいっても、天気予報では夕方から天候が崩れる。だから、予報通りの夕立だろう。


 傘立てには、明らかに女性のもの赤い傘が1本。その傘の前に立ち、首を傾げる社長の甥っ子。そして、ゆっくりと赤い傘に手を伸ばす。


『その傘、○○さんのだぞ』


「えっ、違います。ボクの傘です」


『違うだろ。赤の傘は○○さんしか使っていないはず』


「じゃあ、ボクの傘が無いんです!」


『はあっ? だからって人の傘を勝手に使う理由にならないだろ』


「だから、ボクの傘が赤くなったんです」


 そんな事は考えたこともなかった。想像すら出来ない斜め上の答えを無防備に受けてしまうと、人は混乱し暫くフリーズしてしまう。

 しかし、社長の甥っ子は待ってくれはくれない。赤い傘に手を伸ばそうとしている。


『傘、忘れただけじゃないのか!』


「はっ……」


 社長の甥っ子は、何かに気付いたようだ!

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