「あの～ゴホッゴホッ、体調が悪くて今日１日休みます」

　社長の甥っ子が会社を休む時は、必ずこの言葉から始まる。

『どうしたの、風邪？』

「ゴホッゴホッ、はいギックリ腰です」

　咳には触れないが、このやり取りで毎月１回は必ず休む。それも必ず金曜日で、有給があるのだから、問題はない。

　ただ重要なのは、それが必ず金曜日だということ。もしかすると、木曜日の仕事に何か問題があるのかもしれない。そうなれば、これを放置しては大きな問題に繋がる。

　今日は、ここで電話は終わらせない。

『もう一年、必ず金曜日にギックリ腰になってしまう。何か仕事に原因でもある？』

「違います、ギックリ腰を一瞬で治してくれる医者が居るんですけど、たまたま木曜日に休みが多くて、ゴホッゴホッ」

『それなら今日は、医者に行った後で会社に出てこれる？　一瞬で治るんだろ』

「片道６時間かかるんで、今日は無理です」

『あのさ、それなら平日の仕事終わりに通院なんて不可能。どんな医者なのか教えてくれる？』

「看板も出してないし……電話もない医者なので……行ってみないとボクにも分かりません、ゴホッゴホッ」

　これ以降、ギックリ腰を一瞬で治してくれる名医は、木曜日に休んでいない。ありがとう、ブラックジャック！

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