第5話「舐められたら負け」
クラーラとクリスタに案内され、ハンター組合の何ら変哲のない建物に入ると、ざわめきが起こった。
「クラーラとクリスタだ」
「【
「相変わらずきれいだな、二人とも」
いろんな人間が二人に注目しているのがわかる。
「後ろのおっさんは誰だ?」
「何で二人に案内されてるんだ?」
「見るからに田舎者だし、二人とはつり合わないだろ」
一方で俺に向けられる視線と評価は手厳しい。
田舎のおっさんなのは本当だし、きれいになった教え子とつり合いがとれなくなったのも事実だけど。
「む、先生に対して失礼な発言は許さないよー?」
クリスタが怒りをにじませた声で抗議する。
「そうですね。無礼者の顔と声は覚えました」
クラーラはおだやかだが、不穏な気配をにおわせた。
「もうちょっとこう、穏便にすまないものか」
ここは戦場じゃないんだろうに。
「先生、『
どちらかと言えば温和で理性的なクラーラの口から、想像もつかない言葉が飛び出してぎょっとなる。
だが、彼女は世間の荒波にもまれてきたのだ。
ひとかどの戦士へと成長したのだと考えるべきだろう。
クリスタが受付の女性に話しかける。
「アガーテさん、先生を連れてきたよ!」
「ああ、あれって本気だったんですね」
アガーテと呼ばれた栗色の髪を持つ小柄な女性は、可愛らしい顔をこっちへ向けた。
「失礼ながら、この方が加わったところで【炎蹄牛】を倒せるとは思いませんが」
「ええー」
アガーテの言葉を聞いたクリスタが不満そうな声を出すが、聞いていた男たちはいっせいに笑い出す。
「そりゃアガーテが正しい。そんなさえない田舎のおっさんに何ができるんだよ!?」
二十代前半と思われる、若い男が大きな声を出して、クリスタに絡む。
「は? 先生はね、あんたの五百倍くらい強いけど?」
クリスタはすかさず言い返す。
「先生に対して失礼よ、クリスタ。こんな男と比べるなんて」
クラーラは優しい口調で辛らつなことを言う。
「あ、ごめん。先生。こんなどこにでもいるザコとつい比べちゃって」
クリスタはしゅんとした表情で俺に頭を下げて謝る。
いやいやいやいや、煽りすぎだろう。
二人に絡んだ若い男は顔を真っ赤にして、ふるふると腕をふるわせる。
「はぁああああ? 俺をザコだ? 俺は三級のフーゴーだぞ!?」
怒鳴りながら床を蹴った。
プライドを傷つけられたことはわかるが、他の部分がよくわからない。
「ごめん、三級ってなんだ?」
小声でクラーラに問う。
「なっ!? この田舎者め、三級ハンターの意味を知らないのか!?」
真っ赤になってフーゴーと名乗った男がわめく。
『ハンター』なんてうわさ話でしか聞かないからなぁ。
「すまない。辺境暮らしのもので」
悪いことをした気がするので詫びておく。
「どんな僻地なんだ!? ハンターを知らないということは『怪物』が出ないレベルの秘境ってことか!?」
フーゴーは怒りがおさまらない様子で騒ぐ。
「先生が倒しちゃうから平和なだけだよ」
クリスタがフーゴーを鼻で笑う。
「先生がいればハンターなんていらないものね」
真顔でクラーラがうなずく。
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