第3話「二人からの依頼」

「私たちじゃ勝てなくて、勝てそうな人って先生しか思い当たらないんです」


 とクラーラが言い、


「お願い先生、助けて!」


 とクリスタに拝まれる。

 ……こうなると弱いんだよな。


 この二人だって今までがんばってきて、積み上げてきたものがあるだろう。

 俺に頼みに来るのは恥ずかしいのを我慢しているはず。


「何だ、可愛らしい客だと思ったら、お前の教え子たちじゃないか」


 そこにぬっと現れたのは親父だった。


 身だしなみに気を遣ってない荒々しい武人、と言えば聞こえはいいが、あまり褒められたもんじゃない。


「おじさま、お久しぶりです!」


「おじさま!」


 親父は二人に話しかけられると、とたんにデレデレとだらしない顔になる。

 二人はたしかに可愛いだろうが、示しがつかないぞ……。


 事情を聞いた親父は俺を見て、


「よし、お前が解決してこい」


 と言い出す。

 あんまりなことにあんぐりと口を開けてしまった。


「俺が留守にしたら道場や田畑はどうなるんだよ? 無責任なことはできないぞ」


 と言い返す。

 

「それなら僕でもある程度は何とかなるよ」


 いいタイミングでやってきたデニスが口を挟んでくる。


「デニス」


「あ、デニスさん」


 クラーラとクリスタの二人は礼儀正しくあいさつするが、どことなくよそよそしくも思える。


 まあ俺と違ってイケメンだし、年もそこまで離れていないから、緊張するのかな。


「そうだ。道場や田畑はお前なしでもしばらく何とかなる。最近、『怪物』どももめっきり見ないからな」


「それはそうかもだが……」


 親父に言い負かされるのは何だかしゃくなので、何とか反論を試みたい。


「僕としては『怪物』の動きに何か変化あったのか不安だから、兄貴に調べてきてもらいたいんだけど」


 と思っていたら、デニスがもっともなことを言ってくる。

 

「そうなの! あたしたちがいまいる町だって、ほんとならあたしたちが手に負えない『怪物』が出るような場所じゃないんだよ!」


 とクリスタが早口でまくし立てた。

 

「それってやばいのでは……?」


 俺なんかに頼むより、大都会や王都といった場所に駆け込んで、すごい『ハンター』を派遣してもらうべきでは?


 言ってみたものの、二人の意思は変わらない。


「おい、スヴェン。教え子二人にここまで言われて断ったら、ウチのメンツにも関わって来るぞ」


 と親父が言い出す。


「それを言われると、そうなのか?」


 ハッとすると、


「困った弟子が頼って来たのに冷淡な対応したって言われても、文句は言えないだろうね」


 とデニスに指摘されてしまう。


「クラーラもクリスタもそんな奴じゃないけど」


 むしろ二人ともウチをかばってくれる性格だ。

 この点については自信を持って言える。


「二人が何を言っても無駄な状況ってのは起こり得るんだぞ、息子よ」


 親父の言葉に説得力がありすぎて、がっくりとうなだれた。


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