第2話「教え子クラーラとクリスタ」
ガキどもを教える道場へ顔を出すと、十八歳くらいの女性二人組が座って待っていた。
片方は肩の下まで髪を長く伸ばし、銀色の鎧を着こんでいる。
もう片方はゆるくウェーブがかかったボブヘアーで、鉄の胸当てや手甲という動きやすさ重視の格好だ。
どっちも俺の教え子の面影がある。
「もしかしてクラーラとクリスタか?」
間違っていたら恥ずかしいなと思いながら声をかけると、二人の視線がこっちを見た。
「先生、お久しぶりです!」
目を輝かせて立ち上がり、礼儀正しく一礼したのが長い髪がクラーラ。
「わぁい、先生だ!」
無邪気な笑顔で手をふってくるボブヘアーがクリスタだ。
二人は幼馴染で仲がよく、「ハンター」になりたいと言って、三年ほど前に村から旅立っていた。
「久しぶりだな。手紙はよくもらっていたが」
と言うと、
「先生、もう少しお返事ちょーだい」
クリスタがむーっとふくれっ面になって抗議してくる。
すっかり大人の女性になったと思ったが、こういうところは変わらないな。
「先生。お忙しいのかもしれないですが、そういうときでも手を抜いてはいけないと、おっしゃったのは先生ですよね?」
クラーラは生真面目に話すので、抗議と言うよりは説諭だな。
「そうだよー。あたしたち、先生の教えをちゃんと覚えてるんだからね?」
とクリスタは上目遣いで抗議してくる。
「はは、すまないすまない」
俺は髪をかきながら謝った。
「若い女性相手の手紙なんて何を書けばいいのか全然わからなくね」
と言い訳する。
だからついつい後回しにしてしまうんだよなあ。
男同士ならそこまで気を遣わないのだが。
「ところで今日はどうしたんだ? 二人はたしか『ハンター』になったんじゃなかったか?」
と問いかける。
『ハンター』とは通常の鳥、獣、虫とはまったく違う、謎が多い『怪物』と戦って退治するのが仕事だ。
危険は大きいが、その分実入りもいいらしい。
「そのことなんですが、先生ぜひ手伝っていただけませんか?」
とクラーラが頼んでくる。
「うん? 俺?」
いきなり何を言い出すのかとアゼンとして聞き返す。
「あたしたちだと厳しいと思うけど、先生なら大丈夫のはず! お願い! 先生!」
クリスタは両手をあわせて、両目をぎゅっとつぶりながら懇願する。
「いや、二人はもう立派な『ハンター』なんだろう? 俺はあくまでも素人だぞ」
俺はそう答えた。
正直、かなり戸惑っている。
三年で一人前という言葉があるのだし、この二人は『ハンター』としてのプロだろう。
『怪物』と戦った経験はたしかに俺もあるのだが、日常的に戦う『ハンター』と比べたら、素人止まりになるはずだ。
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