地場念正について2
地場——。何処かで聞いたことがあるような?
田擦の疑問はさておき伊達寺と地場は挨拶を交わした。
「ひっさしぶりだな!元気してたかよ?」
「まあいつもどおり」
「そうか!そら良かったよ」
地場は爽快に笑った。
仲良さそうに話しているが伊達寺と地場では雰囲気が違いすぎる。
しかしあの伊達寺と話せる人がいたとは。この二人はもしかして。
「すみません。挨拶が遅れましたね。伊達寺と同期の地場(ちば)念正(おもただ)です」
ちばおもただ。
地場念正。
まさか。
「!田擦日田向と申します。此方も挨拶が遅れてしまい失礼いたしました。地場第二種放逐官!」
田擦は上げていた頭を再び下げた。
地場念正。放逐官に成ってから僅か数年で第二種放逐官に昇級した男。
魔的対策機関ではちょっとした有名人だ。
第二種級デーモンを何体も放逐しており周囲からの信頼も厚い。
いずれ機関を引っ張っていくとされる放逐官のホープだ。
まさか二人が同期だったとは。
同期ならば伊達寺と親しいのも頷ける。
「敬語は止してくださいよ田擦さん。貴方の方が先輩なんですから」
地場は漆黒の短髪を搔きながら困った様に笑った。
「いやいやそうはいかないでしょう。貴方の方が階級が高い」
田擦は第四種放逐官。
地場は第二種放逐官。
数字は二つしか変わらないが実力には大きな差が在る。
年が上だからと云って階級を無視していい理由にはならない。
「先輩ったら。真面目なんだから」
伊達寺がおちょくってくる。
「お前が不真面目なんだよ」
田擦は口を歪めた。
「ははっ」
地場がその光景を見て微笑んだ。
「二人は仲が良いですね。伊達寺に聞いた通り、田擦さんは真面目で良い人みたいですね」
良い人。其の言葉が胸に張り付いた。
「いえいえそんな。伊達寺とは良く話されるのですか?」
「ええ。会うたびに先輩が先輩がと話してますよ」
顔が熱くなっていくのを感じる。
伊達寺が自分のことを他人に話しているとは。
変なことを云ってないだろうな。
「田擦さんは少し怖いけれど真面目で努力家で頼りになる強い人だ。と以前伊達寺が云ってましたよ」
「伊達寺がそんなことを」
そんな言葉は伊達寺に直接云われたことがない。
同期にはそんな風に話しているのか。
なんだか恥ずかしくなって田擦は俯いた。
「伊達寺の先輩ってことは俺の先輩でもあるんですよね。やっぱり敬語はなしにしませんか?」
「え?ああいや。そういうわけには」
地場は顎に手を当てた。
「うーんどうしようかな。それならじゃんけんで決めますか」
田擦はきょとんとした。
「ん?」
「やっぱり何かを決めるときの究極系はじゃんけんですよね。俺が勝ったら敬語辞めてもらいますよ」
とんでもない提案である。
立場が上の人にじゃんけんで勝てば敬語をやめる?
ないないない。
礼儀と云うのは人として重要な要素である。
要求を呑むわけにはいくまい。
「はいじゃんけんぽん」
「あわわわわ」
地場が勝った。
「おー」と伊達寺が拍手をする。
「俺が勝ったんで敬語は辞めてもらいます。良いですね?田擦先輩?」
「む……そこまで云うならそうさせてもらう。敬いの心は変わらないしな」
「良かった。おっと時間か。それじゃあ俺は会議があるので。失礼します。今度ご飯でも行きましょう」
地場は手を振りながら去って行った。
終始爽やかな人だった。
「先輩と地場は初めましてなんですね」
「ああ」
地場の背中を目で追う。
眩しいな。彼は。
目を細めて微笑んだ。
田擦の瞳は愁いを含んでいる様に見えた。
「なんか良いですよね。地場」
伊達寺のらしくない発言に驚いた。
他人に興味が無い奴だと思っていたがそういうわけでもないらしい。
田擦は大きく頷いた。
「ああ。伊達寺とは大違いだな」
「え。いやみ?」
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