デーモン
田擦が身を置く組織の名は魔的対策機関と云う。
人間が猿の頃から生きている謎の生物デーモンを放逐する為に創設された組織である。
デーモンとは全身が白い皮膚で覆われた異形である。
他の生物に比べ形質が歪で地球外生命体の説も在る。
一般にデーモンを殺すという表現はNGで『放逐する』という言葉が用いられる。
デーモンに対する世論は千差万別でデーモンを擁護する意見すら在る。
魔的対策機関の活動は国民の支援あってこそだ。だから世間体を気にしている。其れが高じて放逐官に『放逐』という表現を徹底させたのだ。
デーモンに共通しているのは人間を襲うこと。だからこそデーモンは放逐しなければならない。
デーモンを放逐しなければ。
田擦にはその意思が張り付いている。
只でさえ私は——。
「それでは解散します。有難う御座いました」
三倉の声で我に返る。
次々と席を立つ班長達を追うように田擦も席を立つ。
三倉、ヰ丁の順に会議室を出て田擦も出ようとする。
ドアに触れる直前に声をかけられた。
「日田向ちゃん。お疲れ様」
振り返ると揉短班長が近くの壁に凭れていた。
「いんやあ~大変だよね。班長がいなくて第四種放逐官二人で捜査しなきゃいけないんだから」
やれやれといったように肩を竦める揉短。
彼の性格を鑑みるに今の発言は自分と伊達寺を労うというより優しい男を演出したいのだろう。
「マジでさ、何かあったら頼ってよ。俺ってこう見えて第二種放逐官だからさ」
魔的対策機関に所属する人間は放逐官と呼ばれる。
放逐官には階級が在り人々への貢献度等で変動する。
下から第四種、第三種、第二種、第一種、特種の五つの階級に分かれている。
田擦と伊達寺は第四種放逐官で目の前の揉短は第二種放逐官である。
揉短の若さで第二種放逐官ということは相当優秀であると考えられる。
第二種放逐官から上の階級に成ると自身の班を持つことができる。
班長の責任は大きいがその分恩恵も大きい。
先の会議は班長達の会議なので田擦以外の人間が第二種放逐官という実力者だ。その班長達中で一番若い揉短は自信が込み上げて仕方ない様である。
「はい。有難う御座います」
精一杯の作り笑顔で対応する。
「今回は安心してくれていいからさ。俺もいるしデーモンは第四種級だし」
凭れていた壁から離れ田擦に近付く。
デーモンの脅威度は放逐官の実力と相対的に表される。
下から第四種級、第三種級、第二種級、第一種級、特種級。
第二種級から上は『特性』という名の能力を持つので危険度が高くなる。
第四種級デーモンは第四種放逐官で放逐できるレベル。
自分達磊磊落班の管轄エリアで現れた陀付は第四種級で脅威度は高くない。
ではなぜ四班合同で捜査しているのか。其れには二つの理由が在る。班長不在の自分達では実力不足ということと捜索範囲が広いことだ。
デーモンは逃げ足が速く活発的に行動している。
第四種級とはいえ野放しにするわけにもいかない。
自分たちが頼りないから自分が弱いから他の班に捜査させてしまっているのだ。
他の班と合同の理由は他にも有るかも知れないが。
「マジでさ、日田向ちゃん大変だと思うしもし何か相談できる相手いなかったら俺がいるから。それに今回は他班との連携がじゅーよーになる。スムーズに共有できるように連絡先交換しない?今回に限らず合同捜査は最近よく行われてるし何かあった時のためにさ」
随分回りくどかったが本命は自分の連絡先の様だ。
どうやら気に入られてしまったらしい。
どうしたものか。
自分のことを揉短は知っている筈だが顔が良ければ何でも良いのだろうか。
しかしこんな自分の連絡先を欲してくれているのだ。無下にするのは申し訳ない。
既に端末を取り出している揉短に「はい」と返事をし自身の端末を取り出
「先輩終わりました?」
気怠げな声が挟まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます