第4話 消えた本の痕跡



魔法学院の図書室は、想像以上に広かった。


「ここです」リリアが案内した場所は、図書室の最も奥まった書架の間だった。


私は台帳を開き、その配置を確認する。すると、不思議なことが起きた。ページの上に、かすかな光の筋が浮かび上がったのだ。


「これは...」


「どうかしましたか?」ミラが覗き込んでくる。


「いいえ...」


答えながらも、私の心は騒いでいた。台帳に浮かぶ光の筋は、書架の配置と重なるように見える。まるで、本の並びが生み出す魔力の流れを示しているかのように。


「藤堂さん」リリアが呼びかける。「この辺りの本が、最近不安定になって...」


彼女の言葉を裏付けるように、周囲の本から不規則な光が漏れ始めた。


私は即座に動き出した。台帳に浮かぶ光の筋を参考に、本を再配置していく。


「まず、占星術は天文学の下位分類。そして古代魔法は...」


作業を進めるうち、ある事実に気付いた。『星の標』が置かれていた場所を中心に、本の配置が歪んでいる。まるで、何かの魔法陣のように。


その時だった。


「危ない!」


ミラの警告と同時に、書架から強烈な光が放たれた。反射的に台帳を掲げた私の目の前で、光が渦を巻く。


そして、見えた。


光の渦の中に、一瞬だけ浮かび上がった文様。私の知る分類システムとは明らかに異なる、古代の何か。


「やはり...」ミラの声が、どこか遠くに感じる。「図書館が、動き始めた」


光が収まると、リリアが青ざめた顔で指差していた。


書架に、新たな本が出現していたのだ。


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